全国のラーメンの名店が出店する「新横浜ラーメン博物館」(ラー博)は、年間80万人以上もの客が訪れる“ラーメンの聖地”です。横浜市の新横浜駅前にオープン後、2024年3月に30年の節目を迎えましたが、これまでに招致したラーメン店は50店以上、延べ入館者数は3000万人を超えます。岩岡洋志館長が、それら名店の「ラーメンと人が織りなす物語」を紡ぎました。それが、新刊『ラー博30年 新横浜ラーメン博物館 あの伝説のラーメン店53』(講談社ビーシー/講談社)です。収録の中から、 ラーメンコンテスト「ラーメン登竜門」での優勝経験もある静岡県伊豆市の「あまからや」を紹介します。
ラーメン未経験から、スパイスラーメンを完成
伊豆半島のなかほどにある静岡県伊豆市の「あまからや」は、新横浜ラーメン博物館30周年企画「あの銘店をもう一度」の第5弾として、2022年9月から3週間出店いただきました。
新横浜ラーメン博物館で1999年に開催した「ラーメン登竜門」というラーメンコンテストがありましたが、そこで優勝されたお店です。今でこそ“スパイスラーメン”という、ラーメンジャンルもできておりますが、「あまからや」の創業者・海老名東人さんは2000年代の初頭に、スパイスラーメンを完成されており、先見の明があったのだと思います。ラーメン店の経験がなかった海老名さんが、いかにして看板メニューの「スパイス醤油ラーメン」を生み出したのか?その過程をひも解いていきます。
【「あまからや」過去のラー博出店期間】
・ラー博初出店:1999年6月3日~8月29日
・「あの銘店をもう一度」出店:2022年9月23日~2023年10月13日
ラーメンコンテスト「ラーメン登竜門」で優勝
「ラーメン登竜門」とは1999年に、「今までの既成概念にとらわれない新しい発想発掘の場」+「これからラーメンに人生をかけようと考える方への夢の場の提供」――というコンセプトのもと、優勝者には新横浜ラーメン博物館に「3カ月間出店できる」というコンテスト型のイベントでした。
応募総数は344名で、そのなかには開業前の「せたが屋」(本店/東京都世田谷区)や、塩ラーメンの「ぜんや」(埼玉県新座市)など、現在有名店となった多くの店主も応募されておりました。1次審査(書類審査)、2次審査(面接)を経た10名が3次審査の審査員試食に進みました。
審査員は、佐野実さん(故人/支那そばや)、山田雄さん(麺屋武蔵)、河原成美さん(一風堂)、村中伸宜さん(すみれ)などの有名店主をはじめ、大崎裕史さん、北島秀一さん、石神秀幸さんらのラーメン評論家の方々でした。
最終審査は3名に絞られ、ラー博のハードリピーター246人による試食審査となりました。結果は僅差となり、「あまからや」の海老名東人さんが選ばれ、優勝者となりました。
当時の投票結果は、「海老名東人さん(あまからや)」86票、「落合泰知さん(どる屋/栃木県宇都宮市)」79票、「野本栄二さん( 縁や/ 当時)」79票、「無効」2票。ちなみにこの優勝旗は現在も「あまからや」伊豆本店に飾られております。伊豆本店は自然豊かな里山にたたずむ築100年の古民家です。