×

気になるキーワードを入力してください

SNSで最新情報をチェック

温泉地数1位と2位が「宿泊税」を導入

温泉地数全国1位の北海道では令和8(2026)年4月から、温泉地数全国2位の長野県では同年6月から1泊300円(長野県は開始から3年間に限り200円)の宿泊税導入の予定。長野県のある温泉旅館の女将は、「宿泊税導入の動きは仕方がないけれど、何に使うか。観光以外の別のものには使わないでほしいと旅館組合でも要望していくつもり。事務作業も煩雑になるし、システム変更のための費用は、誰が見てくれるのか?」と困惑気味だった。

野沢温泉は13の外湯めぐりが人気(長野県)

市町では、熱海温泉のある静岡県熱海市は令和7(2025)年4月から導入(宿泊者1人1泊につき200円)した。湯河原温泉のある神奈川県湯河原町は令和8(2026)年4月からの導入を進めている。指宿温泉のある鹿児島県指宿市と那須湯本温泉のある栃木県那須町は同10月を目指して検討中。大分県別府市では入湯税を増額したのに加えて、宿泊税の導入も検討中という。

知名度のある温泉地から導入しているので、宿泊税の負担を減らしたいなら、今のところ、道県で導入したところを除き、穴場の温泉地を狙えばいい。ただし、この動きは止められず、全国に拡大していくことが懸念される。前述の市町の税額を見ると「5000〜5万円は300円。それ以下は200円、それ以上が500円」(湯河原町)、「定率2%」(指宿市)、「1万円以内が100円、1〜2万円未満が300円。2〜3万円未満は500円、5〜10万円未満は1500円、10万円以上は3000円」(那須町)と行政ごとに税額もさまざまだ。

トイレやゴミ…広がる訪問者負担

(4)美しい景観を守るため? 「訪問税」もある

税負担で考えると、「訪問税」というのもある。持続可能な観光地を維持するための税金で、訪れる人が多くなったために、トイレやゴミの処理代に使う税金を訪問者が負担する。初めて導入されたのは令和5(2023)年、世界遺産の「宮島」(広島県)。和歌山県の「高野山」などでも検討が進められているという。

これら入湯税の増額も、宿泊税も、訪問税も、「選ばれる」観光地・温泉地であれば、需要と供給がマッチして、うまく回るのだろうが、一律で導入を決めた道県はどうだろうか。

「インバウンドも増えていることだし、観光振興には必要なこと」と思いつつも、少しでも費用を抑えたいと思うのが旅行者の心情。さまざまな要素を加味した上で、賢く旅行先を選ぶ時代が到来したといえるだろう。

文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。

icon-gallery
icon-prev 1 2 3 4
関連記事
あなたにおすすめ

この記事のライター

野添 ちかこ
野添 ちかこ

野添 ちかこ

最新刊

春うらら。楽しい散策が待つ谷根千特集です。その散策をもっと楽しくする方法があります。おいしい食べ物を…