広島を代表する銘菓「紅葉まんじゅう」。明治後期に誕生して以来、100年以上の歴史を誇るその菓子は、これまでさまざまな種類の商品が開発されてきた。今でこそ知らない人はいないほどメジャーな菓子だが、もともとこのユニークな形の饅頭が生まれたのは、宮島の旅館の若女将のアイデアからだった。天皇家や数々の著名人も宿泊していたというその老舗宿に、当時のエピソードを聞きにおじゃましてきた。
紅葉谷川沿い、宮島の“カリスマ老舗旅館”
話を伺ったのは、嚴島神社から徒歩5分、地元広島では名前を知らない人はいないほどのカリスマ的な老舗旅館『みやじまの宿 岩惣(いわそう)』だ。政治家の伊藤博文や夏目漱石らの歴史的な著名人から、昭和天皇をはじめ皇族も宿泊したという。紅葉谷川沿いに位置していることから、秋になると色鮮やかな紅葉を望むことができる点が魅力だ。
安政元(1854)年、初代・岩国屋惣兵衛が厳島神社の管絃祭の時期に市の賑わいに着目し、紅葉谷の開拓を許可されて紅葉谷川に橋をかけ、茶屋を設けて憩いの場を作ったのが、この宿のはじまりだった。その後、多くの人々で賑わい、明治初期には旅館として開業したそうだ。