漫才ブームが一気に知名度を高める
ただ、この広島名物が全国区の知名度を一気に獲得した背景には、決定的な要因があった。1980年代初頭の漫才ブームとテレビの影響だ。
「もみじ饅頭のブレイクの最大のきっかけは、漫才コンビ、B&Bのネタだったといわれています。紅葉まんじゅうが題材のギャグで一世を風靡し、同時に饅頭の知名度も爆発的に高まりました」と、女将の岩村さん。
B&B(島田洋七、島田洋八)は、ツービートや紳助・竜介、ザ・ぼんちらとともに漫才ブームを牽引した人気漫才コンビ。漫才の最中に、広島市出身の洋七(ようしち)さんが「もみじまんじゅう!」と声を張り上げるギャグは大人気に。ブームにのってテレビ番組に数多く出演したB&Bの影響力は、想像以上に大きかった。
現在『みやじまの宿 岩惣』では、チーズやチョコレート、クリームなど17種類もの「紅葉まんじゅう」を展開している。宮島の島内を歩いてみると、ほかにも多彩なまんじゅうと出合うことができたほか、「紅葉揚げ」や「もみじクロワッサン」など、紅葉をモチーフとした進化系スイーツも続々と登場していた。
ひとりの若女将の熱い思いとアイデアが、こうした広島の銘菓の源泉になったと思うと、何とも感慨深い。100年以上前の心づくしに思いを馳せながら、宮島伝統の味を堪能してみては。
文・写真/中村友美
フード&トラベルライター。東京都生まれ。美術大学を卒業後、出版社で編集者・ディレクターを経験し、現在に至る。15歳からカフェ・喫茶店巡りを始め、食の魅力に取り憑かれて以来、飲食にまつわる人々のストーリーに関心あり。古きよき喫茶店や居酒屋からミシュラン星付きレストランまで幅広く足を運ぶ。休日は毎週末サウナと温泉で1週間の疲れを癒している。