昔から変わらない継承の味
昭和の日本を縁の下で支えたスタミナ食、そのひとつは間違いなくラーメンだったろう。
1975年頃になるとコンビニの進出で売り上げが見込めなくなり、ラーメンブームの波もあって現在のような専門店に。とはいえ味は流行に流されず、昔のレシピを大事にした。
例えばチャーシューは砂糖不使用の甘くない味。醤油ダレもそうで、チャーシューの煮汁を加えてコクを出す。高橋さんは脱サラからの本格的なラーメン作りだったが、幼い頃から両親の仕事を見て育ったので味の継承で困ることはなかったそうだ。
「これしかできないから、長生きするためにも毎日仕事をすることが大事と感じています。今はできるだけ店を続けたいと思っているんです」
その言葉にまたもや安堵。東京ラーメンを代表する一杯も、高橋さんも、まだまだ現役。あなたや私が求めて止まない“これこれ、こういう味”は、今後も健在だ。
「栄屋ミルクホール」店主:高橋栄治さん
旅行会社などの会社員を経て48歳で家業を継いだ。店はもともと神田司町で日本蕎麦屋をしていたが、戦後の1945年に隣町の神田多町で甘味と軽食の食堂を開業した。1955年頃は当時珍しかったテレビを置き、相撲やプロレスを観るため店の外まで客があふれたとか。時代の流れでラーメンとカレーの店に。旧店は昔の面影を残す建物が名物だったが、立ち退きで現在地に移転した。
[住所]東京都千代田区神田多町2-2-2
[電話]なし
[営業時間]11時~14時(13時50分LO)、15時~17時(16時50分LO)
[休日]土・日・祝
[交通]JR山手線ほか神田駅北口から徒歩3分
撮影/鵜澤昭彦、取材/肥田木奈々