”神保町半チャンラーメン”の御三家
と同時に、この店が一目置かれるのは“神保町半チャンラーメン御三家”のひとつと言われているからだろう。諸説あるが神保町はいわゆる半チャーハン&ラーメンセットの発祥地とされている。
半チャンラーメン700円※変更あり
「チャーハンとラーメンが両方食べたい」という要望に応えたのがきっかけで、いち早く提供した数店の内の1軒がここというわけ。今や当たり前の最強コンビがこの界隈で誕生したとは恥ずかしながら知らなかった。神保町はその聖地としても知られるそうだ。
大輔さんのブレない仕事が注がれたラーメンは、余計なものが削ぎ落とされたようなシンプルなおいしさだ。素朴なチャーシューは噛むほどに旨みが出てくる。チャーハンがまたやさしい味で、両方食べればたっぷり満足の量と安さ。いやあ、どれだけの腹ペコたちがこの庶民的なセットに助けられてきたか。でも決して安さだけじゃない、また無性に食べたくなる味……。
「こだわりなんてないのよ。真面目に心を込めてやってると味に出るのね、あはは」。
佳代子さんは冗談っぽく笑うが、本当にそうだ。お腹いっぱい食べてね、という真心が誠実な味と接客にあふれている。
「店を守ってきた初代と主人、そして来てくれるお客さんに感謝しかないんです」
やっぱり街のラーメン屋さんは大変な商売だ。けれど人々の生活を陰で支える尊い仕事だと、つくづく思う。
「中華そば 伊峡」の女将:沢木佳代子さん
神田生まれの江戸っ子。長男の大輔さんと暖簾を守る。神保町半チャンラーメンの御三家といわれる店は1966年創業。佳代子さんの夫で2代目の昭司さんと初代との間に血縁関係はなく、以前働いていた会社で出会ったことが縁で一緒に商売をするようになった。初代亡き後に家族で店を受け継いだ。現在の営業は麺が無くなり次第終了のため、14時前に終わることも多い。
[住所]東京都千代田区神田神保町1-17
[電話]なし
[営業時間]11時~14時頃※麺が無くなり次第終了
[休日]日・祝
[交通]地下鉄半蔵門線ほか神保町駅A7出口などから徒歩2分
撮影/鵜澤昭彦、取材/肥田木奈々