フロントマスクは賛否分かれた
そして問題はフロントマスク。これは当時も賛否分かれていたのだが、否定派のほうが多かったと記憶している。筆者もプログレを始めて見た時は、『なんでこんな顔にした?』と絶句した。
独立した丸4灯ヘッドライトのモデルは2代目アリストなど売れたケースもあるが、ヘッドライト内側に丸灯を配置したモデルで売れたモデルはほとんど記憶にない。3代目トヨタソアラ、ホンダCR-Xデルソル、マツダオートザムクレフなどなどみんな販売面で苦戦。デザインは人によって感じ方が違うので正解というものはないが、どことなく間抜けに見えるというのは筆者だけの感覚なのだろうか。
結果論になるが、新世紀に向けた新コンセプト、小さな高級車を訴求するために、もう少し無難なデザインで登場していればプログレの人生も変わっていたかもしれない。まぁ、無難なデザインで登場していれば、『個性がない』と酷評されていたのだろうが……。
エンジンは2種類の直6
プログレに搭載されたエンジンは、排気量違いの2種類の直列6気筒DOHCで、その排気量は2.5Lと3L。トヨタ直6の名機であるJZ(ジェイゼット)エンジンのノンターボ版だ。BMWの直6に負けないくらいスムーズな回転フィールは、小さな高級車のプログレにはピッタリ。パワーは2.5Lが200馬力、3Lが215馬力と大差なかったが、トルクは2Lの25.5kgmに対し3Lは30.0kgmと余裕があるのが特徴だ。
本来なら直4エンジンが妥当なコロナ、カリーナと変わらない小さいボディに、無理やり長い直6の2.5Lや3Lの直6エンジンを搭載していた感じが特別感があってナイスだった。
小さな高級車ゆえ、ボディサイズは小さいながらもボディ補強、遮音材、吸音材などがふんだんに使われていたこともあり車重は1500kg近く(1460~1480kg)あったが、2.5Lでも非力に感じることはなかった。
インテリアは最大の魅力
プログレの真骨頂はインテリア。セルシオクォリティというのは口先だけではなかった。デザインはオーソドックスながら、素材にこだわりを見せていた。特にウォールナットパッケージは木目調パネルではなく本木目パネルが奢られていた。このクラスでも唯一無二の存在だった。ふんだんに使った贅沢なソフトパッドなどパネル類を除き、プログレの室内はどこを触っても柔らかい、というのが大げさな表現ではなかった。
シートも本革とファブリックの設定があったが、本革シートは革の張り具合が絶妙で、使い込むほどフィット感が増し、風合いもよくなっていった。
一方ファブリックシートは素材はイタリア産で、座った感じが柔らかいのが特徴なのだがその製法に秘密があった。プログレはシートの製作段階において薬品をかけたりする化学的製法ではなく『風を当てて生地を柔らかくする』という物理的製法が用いられていて、さすがは小さな高級車と唸らされたのを覚えている。