プログレは販売面で苦戦
トヨタだけではなく日本の自動車メーカーは、何度も『小さな高級車』というジャンルにトライしてきた。現在ではレクサスがLBXで小さな高級SUVを登場させている。現時点では人気は上々で成功しているように見えるが、過去のモデルに関してはプログレを含めその結果は芳しくない。
プログレは1998年にデビューして2007年に生産終了となった。その間の販売台数は7万8000台と多くないため、成功したとはいいがたいのだが、そのインパクト、トヨタのチャレンジ精神は今でも評価されている。兄弟車としてブレビスが販売されたが、プログレ、ブレビスともに後継車は存在せず一代限りで消滅となった。
プログレが成功できなかったのは、小さな高級車としての魅力を備えていたものの、実際に販売してみるとユーザーはより見栄えのする大きいセダンのほうを好んだということ、そして賛否の分かれたデザインの2点だったと思われる。
終のクルマとしての需要
デビューから20年以上が経過している現在、最終モデルでさえ18年前となるわけだが、中古車がにわかに注目されている。安い個体だと30万円前後から購入することができるが、古いクルマの価格は基本的に程度の差と考えられる(悪徳業者を除く)ので、安心を買うなら150万前後が妥当な金額となるだろう。
古いセダンに150万円も出すのか? と思うかもしれないが、今のご時世5ナンバーサイズのセダンで、シルキーな直搭載、内装は魅力的なセダンなんて買えないし、そもそも存在しない。プログレは乗れば乗るほど味が出るクルマでもあるので、終のクルマの候補と考えているクルマ好きはけっこういる。
ただし購入する場合は、パーツ面での供給問題、自動ブレーキをはじめとする安全装備がないことなどの面で覚悟が必要となる。そんなことを差し引いたとしても、現在としては非常に魅力的なセダンであることは間違いない。
【トヨタプログレNC250主要諸元】
全長4500×全幅1700×全高1435mm
ホイールベース:2780mm
車両重量:1460kg
エンジン:2491cc、直6DOHC
最高出力:200ps/6000rpm
最大トルク:25.5kgm/4000rpm
価格:310万円
【豆知識】
プログレのデビューから約3年後の2001年6月に登場したのがプログレの兄弟車のブレビス。プログレが個性的なフロントマスクだったのに対し、ミニセルシオ的なフロントマスクが与えられ、プログレよりも若年層をターゲットとしていた。ボディサイズではプログレよりも全長で50mm、全幅で20mm大型化されていたが大差なし。デビュー時には人気モデルとなったが長続きしなかった。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/TOYOTA