S-MXはクリエイティブムーバーの第4弾
CR-Vを登場させて意気上がるホンダは、その年の東京モーターショー1995で2台の市販を前提としたコンセプトカーを登場させた。1台がBOXタイプミニバンのF-MX、もう一台がハイトワゴンのS-MXだ。
F-MXはクリエイティブムーバーの第3弾としてステップワゴンと車名を変更したが、第4弾のS-MXはコンセプトカーの名前そのままで、両モデルとも1996年にデビューを果たした。
ちなみにF-MXはFamily Mover X、S-MXはStreet Mover Xの略で、ステップワゴンはファミリー向け、S-MXは若者向けという位置づけだ。CR-X、NS-XなどXはホンダが好んで使っていて、Xは無限の可能性や不思議な魅力を意味している。
またS-MXには『ステップバーン』というサブネームが付けられていた。これは1970年代に若者に人気となったステップバンと『青春を燃やす(Burn)情熱』を掛け合わせた造語で、ステップバンの再来という意味も込められている。
ステップワゴンのショート版
ホンダはS-MXを登場させるにあたり、ニュートレンド・パッセンジャーカーと謡っていた。ワゴンRが軽ハイトワゴンというジャンルを確立し、それにダイハツムーヴが追従していたが、小型乗用車ではハイトワゴンは存在しなかった。その意味でS-MXは新たなトレンドを提案したモデルだった。
前述のとおりF-MX(ステップワゴン)とS-MXは同時に東京モーターショーで公開されたが、実はこの2車はプラットフォームなどのコンポーネントを共用している。つまりステップワゴンのショートバージョンがS-MXなのだ。
ボディサイズは全長3935×全幅1695×全高1735mm。ステップワゴンが全長4605×全幅1695×全高1830mmだから670mm短く、95mm背が低い。全長の短縮に伴いホイールベースはステップワゴンの2800mmから300mmショートの2500mmとなっている。
ボクシーなデザインが特徴
S-MXはステップワゴン同様に運転席側のリアドアがない変則3ドアを採用。ただしステップワゴンがスライドドアに対してS-MXはヒンジドアを採用。
エクステリアもステップワゴン同様にボクシーでスクエアなデザインが与えられているが、前後のオーバーハングの短さ、ステップワゴンよりも背が低いこともありスポーティな仕上げ。丸灯が強調される異形ヘッドランプもファニーな表情を作り出している。日本ではシボレーアストロの並行輸入車が若者に人気となっていてそれを彷彿とさせた。2000年にトヨタからミニアストロを具現化した初代bBが登場するが、S-MXのほうが4年も早かったのだ。
リアデザインではスパッと切り落としたリアエンド、Cピラーに配置されたリアコンビが特徴だ。これはボルボが先鞭をつけ、世界的トレンドとなったが、S-MXはリアのパネル面積を広く見せる効果もあり、ボクシーさが強調されていた。