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標準とローダウンを設定

S-MXは標準ボディ(前輪駆動のFFと4WD)とローダウン(FF)の3タイプを設定。全長、全幅は同じだがローダウンは30㎜背が低い。ローダウンはS-MXのスポーティ仕様という位置づけだった。車高を低くするのは、コーナリング時のスタビリティを高めてハンドリングをよくするための常套手段で、スポーツモデルが標準モデルよりも車高が低いのはよくあることだが、メーカーがローダウンとアピールしたのは初めてじゃなかったか。

ローダウン(左)と標準(右)はぱっと見ではあまり差はない

しかし、実際に走ってみると標準とローダウンでそれほどハンドリングに差はなかった。それよりもハンドルの軽さ。ホンダ車のパワステは軽すぎるというのは1980年代からの常識だが、S-MXの場合、ちょっと軽すぎといった印象が強い。あとは乗り心地。ローダウンはサスペンションストロークが短くなるので路面からの突き上げも大きく、乗り心地が硬くてかなり悪かった印象だ。

30mmの全高差が最も影響していたのは乗り心地。ローダウンはかなり硬い

タイプRもターボも市販化されず

エンジンは2Lの直4DOHCで、標準もローダウンも130ps/18.7kgmのスペックで同じ。1340kgの車重は、全長4000mmを切るモデルとしては重いため、遅くはなかったがスポーティでもなかった。ただ、排気管の取り回しに気を使った効果は絶大で、スポーティなエキゾーストノートを奏でていた。

組み合わされるトランスミッションは4ATで、フロントベンチシートにするためにコラムシフトをあえて採用していた。

2L、直4DOHCエンジンは130psでデビューしてマイチェンで140psにパワーアップ

S-MXの動力性能に関してはモアパワーを望む声も多く、マイナーチェンジで140psにパワーアップされた。しかしそれでは飽き足らないユーザーも多く、ホンダもあれこれ考えていたようだ。実際に筆者が編集作業に従事していた『ベストカー』では、タイプRやターボエンジンを搭載したスペシャルモデルのスクープ情報も入ってきていた。もう少し売れるクルマだったら、それらの追加モデルもあったのかもしれない。

今思えばローダウンでスポーティさをアピールしたのだから、最低でもホンダお得意の2L、直4DOHC+VTECを与えてもよかったのではなかっただろうか。そうすればもっと走りで差別化できたと思うが、結果論でしかない。

普段の使用では不満はないがモアパワーが切望されていた

恋愛仕様

今ではそれほど目立たなくなったが、1990年代のクルマ界において自動車メーカーは新型車を登場させるたびに独自のキャッチフレーズを与えるのが一般的だった。それはコンセプトをわかりやすくユーザーに訴求するためだ。『カッ飛びスターレット』などのようにキャッチフレーズが愛称として定着しているモデルも少なくない。

で、S-MXだ。S-MXのキャッチコピーは『恋愛仕様』。カタログ、TVのCMでも大々的に『恋愛仕様』をアピールしていた。デビュー後にデートカーとして人気となったクルマ(2代目、3代目プレリュードなどがそう)はいろいろあるが、デビュー時に自らそれをアピールしたクルマは後にも先にもS-MXしかない。

恋愛中の2人のために室内は至れり尽くせりの装備を誇った
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歯の浮くような言葉の数々で魅力をアピール
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市原 信幸
市原 信幸

市原 信幸

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