泡盛で育った石垣牛
南ぬ島(ぱいぬしま=“南の島”を意味する沖縄県八重山の島ことば)の温暖な気候で育まれた石垣牛。神戸牛や松阪牛に次ぐブランド牛とされ、その美味しさには“特別に配合”されるエサに秘密があった。
沖縄県原産の蒸留酒「泡盛」は、その製造過程において原料となるタイ米から“搾り粕”が出る。これは従来、産業廃棄物として捨てられてきたものだったが、これを従来のエサに配合することで、肉に含まれるオレイン酸の量が倍増するという。もちろん肉の美味しさも大事ではあるが、ゴミの排出量を減らす取り組みによって“循環型農業”を実現していることは、なにより素晴らしいことだ。
そんな説明を聞きながら目の前に現れた「石垣牛サーロインのロースト(約80g)」には、“島オクラ”と“島らっきょう”が添えられていた。柔らかくジューシーな肉質に、適度な脂肪がたまらない食感は、言葉にならない美味しさだった。残念ながらこの品は、特別な機会(限定メニュー)でしか食べることはできないが、通常のランチやディナーのア・ラカルトで「石垣牛」を味わうことができる。
日本唯一の“有機栽培”のパイナップル
食後といえばデザートなのだが、これにも“やえやまファーム”ならではの食材が使われていた。それは、日本唯一の有機栽培による「パイナップル」だ。パイナップル栽培において、絶対に不可能といわれた“有機栽培”を実現し、できるだけ農薬や化学肥料を使わずに育てた、夏の一時期にしか味わえない贅沢なフルーツだ。
海を連想させる色合いのお皿に盛りつけられた”甘い香りのパイナップル”「ピーチ種」を贅沢に使ったマダガスカルヴァニラ。そこに石垣島の調味料「ピパーツ=島こしょう(石垣そばなどの薬味として有名)」が添えられ、そのエキゾチックな香りが一段とパイナップルの甘さを引き立てくれる。口当たりもよく、食べてしまうのがもったいないくらい、品のある味わいだった。
食事のあとのコンサート、沖縄を想う歌に酔いしれる
夕陽ヶ丘食堂では、毎月25日にディナーコンサート「瀬戸の詩ごよみ」を開催している。このコンサートは12回目を数え、食事を済ませた20時ごろからコーヒーや紅茶を飲みながら、心地よい音楽に耳を傾けるという趣向だ。
訪れた日は、「海と風に響く、島の歌」と題したプログラム。沖縄県出身のソプラノの川満理加(かわみつ・りか)さんが、「花〜すべての人の心に花を〜」や「涙そうそう」など沖縄ゆかりの曲を”朗々と歌い上げた。ピアノは兵庫県出身の高原珠実(たかはら・たまみ)さん、三線(さんしん)は群馬県出身の椛沢かすみ(かばさわ・かすみ/バイオリン奏者)さん。3人は沖縄県立芸術大学で学んだ仲だ。
今回ご紹介した“石垣島”の食材をメインにしたコース料理は、年に一度開かれる「石垣島フェア」の時に限られるが、同店の通常メニューの中にも“石垣島の食材”を使ったものがあるという。身近に石垣島を味わえる浜松町へと、足を運んでみてはいかがだろうか。
■『夕陽ヶ丘食堂』
住所:東京都港区浜松町2-7-3
電話:03-6721-5652
営業時間:ランチ11時半~14時(Lo13時半)、カフェタイム14時~16時(Lo15時半)、ディナー17時~21時(Lo20時)、ベーカリー7時~17時
定休日:日曜・祝日
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。取材で訪れた全国各地の“美食探し”もライフワークの一つ。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。
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