JR、都営地下鉄、モノレールが乗り入れ、多くのビジネスマンらが行き交う東京・浜松町(港区)。浜松町駅前には、かつて日本で、“もっとも高い”超高層ビルとして名をはせた「世界貿易センタービルディング」(1970年に完成)が建っていた。今では、そのビルも老朽化により取り壊され、周辺を含めた再開発(新たな世界貿易センタービルディングへの建て替えなど)が進んでいる。その再開発地の目と鼻の先にある『夕陽ヶ丘食堂』は、香川県の小豆島の食材を使った料理を提供するレストランとして街で知られた存在だ。ただ、今の時期は沖縄県の石垣島の食材を使った料理が提供されているという(石垣島フェアは2025年7月1日~31日)。小豆島に、石垣島…。その2つを繋げる背景には何があったのか。
※トップ画像は、南ぬ島(ぱいぬしま=“南の島”を意味する沖縄県八重山の島ことば)の温暖な気候で育まれた石垣牛サーロインのロースト(約80g)。これは限定メニューで、特別な機会にのみ提供される=夕陽ヶ丘食堂で、2025年7月25日
2022年7月1日オープン、浜松町の“街の食堂”
再開発工事が行われている裏手のあたりは、表通りの雑踏とは一線を画す閑静なエリアだ。外壁に“夕陽の写真”が飾られた夕陽ヶ丘食堂は、2022(令和4)年7月1日にオープンしたばかりの新しいレストランだ。ランチとディナーはもちろん、朝7時から営業する“ベーカリー”も併設されており、早朝から活動する人たちにとってうれしい、なんとも気の利いた“街の食堂”なのだ。
店舗に入ると、1階はオープンキッチンとベーカリーになっていた。1階だけでなく、2階にもテーブル席がある。訪れた2025年7月25日は、“ディナーコンサート”が開かれるイベントデー。夕刻、会場となる2階のテーブル席(40席)はすでに予約客でいっぱいだった。
小豆島と石垣島、“離島同士”のコラボで実現
夕陽ヶ丘食堂は、 浜松町でレストランや産直ショップを6店舗展開する『カサイホールディングス』の運営。代表取締役を務める笠井寛さんの出身地が小豆島で、この島にある自社農園『カローレ小豆島』から届く新鮮な野菜や果物も使った料理が提供される“せとうみ推し”のレストランだ。
「オリーブ牛」や、ブランド地魚「小豆島・島鱧(しまはも)」など小豆島屈指の食材のほか、島内で収穫された旬の野菜や果物などが美味しく味わえるというわけだ。
しかしこの日は、沖縄県「石垣島」の食材を使った料理だと聞かされた。その理由を尋ねてみると、県という”垣根”を越えた「離島同士」のコラボレーションによるものだという。
ではなぜ、石垣島なのか。そこには、製薬会社が展開する「有機栽培」や「循環型農業」を行う『やえやまファーム』(沖縄県石垣市)の存在があった。