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国内唯一のセメント輸送列車

「末広橋梁」を通過する貨物列車は、日に3~5往復といわれる。そのすべてが“粉体セメント”を積むことができるタンク貨車を連結した貨物列車だ。かつては日本全国で見ることができたセメント輸送列車なのだが、いまとなってはここだけでしか見ることができなくなってしまった。

この貨物列車は、三重県いなべ市にある日本最大のセメントメーカーである太平洋セメント藤原工場のある東藤原駅から四日市港にある同社四日市出荷センターまで、三岐鉄道〔さんぎてつどう〕とJR関西本線を経由し、さらに四日市駅から引き込み線(側線)を通って太平洋セメント専用線へと継走される。

「末広橋」を渡る貨物列車は、まさにこのセメント列車であり、四日市駅から太平洋セメントの構内線(専用線)との境界点となる旧四日市港駅までは、JR貨物から委託を受けた名古屋臨海鉄道によってその運行が行われている。末広橋梁と引き込み線の線路は、JR貨物の管理下(財産)にある。貨車で運ばれてきた粉体セメントは、四日市出荷センターで船舶に積み替えられ、全国各地へと出荷される。空になった貨車はというと、再びいなべ市の藤原工場へと送り返されるというわけだ。

毎年、4月末から6月上旬までは藤原工場が一斉点検や修繕を実施するため、これに合わせてセメント列車は運休となる。当然、「末広橋梁」を通過するセメント列車も運休となり、橋の可動桁も跳ね上がったままになるのだとか。普段でも工場からの出荷状況によってセメント列車は運休になることもあり、可動橋が動くのを間近で見られるのは、“運次第”といったところだろうか。

かつての国鉄には、全国にさまざまなタイプの可動橋が存在した。そんな事実も遠い記憶となりつつある昨今。末広橋梁には、いつまでも活躍してほしいと願うばかりだ。

末広橋梁を渡る国内唯一のセメント輸送列車=2026年9月5日、三重県四日市市
末広橋梁を渡った先にある千歳町では、太平洋セメント専用線の線路が目の前を通過する。車両は入換を行うセメント輸送列車=2026年9月5日、三重県四日市市
四日市港にある太平洋セメント四日市出荷センター。ここで粉体セメントは貨車から船舶へと積み替えられ、全国各地へと出荷される=2026年9月5日、三重県四日市市
三岐〔さんぎ〕鉄道三岐線の大安〔だいあん〕~三里〔みさと〕駅間にある宇賀川橋梁をゆくセメント輸送列車=2026年9月5日、三重県いなべ市
福岡県と佐賀県の間を流れる筑後川に架かる国鉄・佐賀線の筑後川昇開橋。この橋は現在も遊歩道として活用されている。国指定重要文化財、機械遺産第23号認定=撮影年次不詳、撮影/鈴木靖人
1984(昭和59)年まで、当時の静岡県静岡市に存在した国鉄・清水港線にあった巴川可動橋。国鉄の旅客線には、ここを含めて3か所に可動橋があった=1984年3月31日、静岡県静岡市(当時)、撮影/豊永泰太郎

※取材協力/鉄道友の会・東京支部

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文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。

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