国内唯一のセメント輸送列車
「末広橋梁」を通過する貨物列車は、日に3~5往復といわれる。そのすべてが“粉体セメント”を積むことができるタンク貨車を連結した貨物列車だ。かつては日本全国で見ることができたセメント輸送列車なのだが、いまとなってはここだけでしか見ることができなくなってしまった。
この貨物列車は、三重県いなべ市にある日本最大のセメントメーカーである太平洋セメント藤原工場のある東藤原駅から四日市港にある同社四日市出荷センターまで、三岐鉄道〔さんぎてつどう〕とJR関西本線を経由し、さらに四日市駅から引き込み線(側線)を通って太平洋セメント専用線へと継走される。
「末広橋」を渡る貨物列車は、まさにこのセメント列車であり、四日市駅から太平洋セメントの構内線(専用線)との境界点となる旧四日市港駅までは、JR貨物から委託を受けた名古屋臨海鉄道によってその運行が行われている。末広橋梁と引き込み線の線路は、JR貨物の管理下(財産)にある。貨車で運ばれてきた粉体セメントは、四日市出荷センターで船舶に積み替えられ、全国各地へと出荷される。空になった貨車はというと、再びいなべ市の藤原工場へと送り返されるというわけだ。
毎年、4月末から6月上旬までは藤原工場が一斉点検や修繕を実施するため、これに合わせてセメント列車は運休となる。当然、「末広橋梁」を通過するセメント列車も運休となり、橋の可動桁も跳ね上がったままになるのだとか。普段でも工場からの出荷状況によってセメント列車は運休になることもあり、可動橋が動くのを間近で見られるのは、“運次第”といったところだろうか。
かつての国鉄には、全国にさまざまなタイプの可動橋が存在した。そんな事実も遠い記憶となりつつある昨今。末広橋梁には、いつまでも活躍してほしいと願うばかりだ。

※取材協力/鉄道友の会・東京支部
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。

















