お待たせしました!1ヶ月で計130杯のそばを食べた蕎麦特集取材班によるぶっちゃけ座談会の始まり始まり~。覆面調査時のこぼれ話に、やっちまった失敗談、取材拒否の人気ぶりなどなど、特集で書けなかった裏話をしゃべくります!
画像ギャラリー食べ比べて分かる
蕎麦&つゆの奥深さ
メンバーはせいろ担当のライター肥田木奈々(以下肥)、温蕎麦担当の岡本ジュン(以下岡)、鴨南蛮担当の池田一郎(以下池)、蕎麦前担当の菜々山いく子(以下菜)、それに編集の和賀(以下和)と武内(以下武)の6人。
肥「いや~、この1か月、ズズッとやりましたよ、ズズズッとね。少し前に日本人は麺類をススる音が汚いとかで〝ヌードルハラスメント〟って外国人観光客に言われて論争になってたけど、パスタはさておき蕎麦は別もんだよね、ね、ねーっ」
菜「確かに音を立てて蕎麦を手繰るのは香りを楽しむためだし、日本の伝統的な文化だし、それが粋ってなもんだよね。でもさ、たまにズドドドーッて、思わずツッコミたくなる大音響の人もいるよね(笑)」
肥「ハハハ、いるいる。まあ何事もホドホドがいいってことか。それはそうと、私はダンゼン冷たいせいろ派だけど、温蕎麦は調査してみてどうでした?」
岡「それがですねえ、ひと言でいえば奥が深い! 蕎麦好きはせいろ派が多いと思うけど、実は種ものの世界はバリエーションが豊富で楽しいんです。温蕎麦こそ、いろいろチャレンジするべきだと開眼しましたよ」
武「特に印象に残った店は?」
岡「イチオシは『ほそ川』の『かき蕎麦』かな。無言でむさぼり食べて、気が付けば丼がカラになってたほど美味しかった。つゆが好みだったのもこちらの店で、蕎麦との相性も素晴らしいの。つゆを制する蕎麦屋はワンランク上と思いますよ」
池「ボクも食べ比べて改めて思ったのは、かけつゆは店によってかなり異なるってことだね。今まで何となく厚削りの本枯節を煮出してとか、鯖節を加えてとか勝手に思ってたけど、全然違う! 使う節の種類もいろいろ、削りもいろいろ、煮出す時間もいろいろ。そう思いながら味わうと、また楽しー♪」
肥「確かにつゆの味わいって店の個性が出ますよね。もちろん蕎麦屋だから、蕎麦粉の品種や選別、挽き方、打ち方を大事にするのは当然なんだろうけど、せいろの方で紹介した『うじいえ』もダシの取り方に一番心を注ぐって言ってた。冷たい蕎麦と温かい蕎麦でダシの種類やかえしを変える店がほとんどですしね。私はせいろの味わいで言えば、『大川や』の十割が気に入ったな。極細なのにしなやかなコシがあってのど越しも香りも上品なの」
武「そこ、市ヶ谷にある人気店のご主人が神楽坂に新しく出した店ですよね。穴子の天せいろ
が美味しかった。エビの天ぷらがなくて、穴子にこだわってるのが潔くて良かったな」
肥「そうそ、穴子、ホックホクだった! ほかにも蕎麦の味だけじゃなくて古民家風の空間が素敵だったのは『しろう』。ここ絶対デートで使える」
岡「こっちも天ぷら蕎麦ならご存じのは『蕎楽亭』がおすすめ。温かい蕎麦と別盛りで季節の天ぷらを供するスタイルで、こんな上品な世界観があるのかと感動しました。頼めばかけつゆにぼっちゃり(直づけ)も可能で、その場合はつゆもちょい濃いめにするなど配慮してくれるそう。あれだけの人気店でこのサービス精神は嬉しい。だからこそ愛されるんでしょうね」
池「うん、いい蕎麦屋の店主って、蕎麦打ちからサービスまで何事にも妥協がないというか、情熱をヒシヒシ感じるよね」
肥「自分の求める蕎麦粉になるよう玄蕎麦や丸抜きを石臼引きで自家製粉する店も珍しくなくなったし、かといって自家製粉じゃなきゃダメと言う訳でもなく、あえて業者や農家から安定した品質の挽きたてを仕入れる店もあるし。それぞれ店のこだわりを聞くのが楽しかった」
和「私はせいろの次に好きな蕎麦が、かけと花巻。特に花巻は海苔の香りもさることながら地味(滋味)な佇まいがシビレるんです。滋味専です、ハイ」
肥「ほお、そういえば花巻ってほとんど注文したことない」
和「それがさ、最近ではせっかく花巻を供してるのに、蓋も付けず、海苔を別皿で盛る店もあっていささか衝撃。それでは香りが立たんじゃないかーっ!」
岡「わ、和賀さん?」
和「そういう店に行くと、『そもそも花巻ってぇのは…』とくだを巻きたくなるお年頃の私。でもそんな昔ながらの由来を知るのは面白いものです。過去にも散々蕎麦に関して調べてきたつもりだけど、渋酒コラムの取材時に『神田まつや』のご主人からお聞きした蕎麦前の話はいまさらながら感心する内容が多く、興味深いものでした」
武「蕎麦前も今や種類の豊富さは居酒屋並みですよね。日本酒の揃えが良い店も増えて、調査では〆の蕎麦にたどり付くまでにハッピーになってしまうことも度々。ねえ、菜々山さん?」
菜「その通り! 蕎麦前ジャンルの目玉は『菊谷大塚別亭』かな。巣鴨の名店が大塚に出した2号店でさ。以前「蒼天」という焼き鳥の人気店があった場所にオープンしたから、大塚に住む私にとっては、名店の跡地にまた名店が! って驚きも。コース仕立てで、蕎麦前が超充実なの。地元民にもまだそれほど知られてないから、これから話題になると思うよ」
肥「話題店なら『案山子』もすごくいいよ。大人気の自店を辞めて、ご夫婦で自分たちの理想を形にしようと始めた新店なの。そんな名店の店主が新たに始める店が最近増えてるね」
池「そうか、先に出た『大川や』もそうだしね。で、蕎麦の名店が多い西武線沿線でも、また旨い店見つけたんだって?」
菜「そうそう、新店の『雷鳥』。あえて名店揃いの沿線に出店したんだって。つまみの種類はそれほど多くないけど、どれも美味しいよ」
あわや無銭飲食?!
取材拒否店の親切に涙
岡「ところで、今回は取材拒否ってありましたか?」
池「おっと、待ってました。鴨南蛮は2軒あった。どちらも捨てがたい名店だからちょっと情報をお知らせしちゃおう。まず根津の『T』。朝7時から9時半まで営業する朝の部があって、ボクは日曜の朝に行ったんだけど、食べ終わって店を出た8時半にはもう店先にクローズの表示が! 蕎麦が無くなったようなんだよね。ハンパない人気」
肥「休みの早朝から? 皆さん元気だなー。私は二日酔いでムリだわ。で、もう1軒は?」
池「半蔵門の『S』。小さい店をご夫婦で切り盛りしているから、入った瞬間、もしや取材NGかという予感がビンビンしつつ」
岡「それでそれで?」
池「鴨南蛮、絶品やった! 個人的にかなりスキ鴨~」
和「って、おやじギャグか」
池「いやいや、ホント感じもいいし、いい店でっせ。んで、これはぜひ撮影キマリと思いながらカバンの中を見たら、ナイナイ! 財布がナーイ」
菜「うそっ、ウケる」
池「でさ、『あの〜、札入れを忘れまして後ほど必ず』と事情説明して名刺(完璧ネタバレ)を差し出す自分。その後、ご丁寧に『お振込みでもいいですよ』と電話をもらい(涙)、時間差で取材を申し込んだけど(そんなボケで距離感縮まったかと期待)やっぱNG。トホホ」
和「ま、今回も皆さんのそんなこんなの珍プレーいや努力の末に厳選した三ツ星店ってことで。お疲れさまでした!」
武「僕は個人的にわんこ蕎麦で菜々山さんに惨敗した不甲斐なさが心残りだけど。まあそれは置いといて。蕎麦は抗酸化作用など健康にもいいルチンが豊富なのも嬉しい限り。旨い&ヘルシーな蕎麦で福を呼び込みましょう!」
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