【ふうふう熱々うどん三昧】讃岐の影響でコシの強いうどんが定番化したが、近年は博多うどんにも注目が集まり、柔らかいうどんが浸透。ふにゃふにゃを中心に“やわうどん”を調査した。 撮影/小島 昇、鵜澤昭彦、小澤晶子 取材/菜々山いく子、市村幸妙、赤谷まりえ
画像ギャラリー福岡系
黄金色に澄んだツユ、〝腰抜け〟と言われるほど柔らかい麺が特長の〝博多うどん〟に代表される福岡のうどん。都内でも博多をはじめ、豊前、筑後など各地の味が上陸している。
久留米うどん(最寄駅:渋谷駅)
都内で唯一! ふっくらモッチリ”筑後うどん”
ふんわりやさしい口当たりが福岡県南部で愛される“筑後うどん”の特長。二毛作が盛んであったこの地で、主食ではなく汁物として食卓に上ったことから、柔らかな食感が好まれたのだ。東京でこのうどんを出す、唯一の店『久留米うどん』が2017年お目見え。麺は茹でてから半日以上置いて水分を飛ばし、注文時にツユで煮込んで麺自体にしっかり味をふくませる。ひと箸たぐれば、煮干しダシの濃厚な風味が口の中で広がっていく。
大地のうどん 東京馬場店(最寄駅:高田馬場駅)
熟成を重ねて仕上げていく透明感あふれる“豊前うどん”
この『大地のうどん』東京1号店は現地のスタッフが上京し2016年オープンさせた。目を見張るのが輝くような麺の透明感。多加水で打ち上げてから、高温・低温・常温で3日間かけて熟成を重ね、生地を育てていく。切りたて、茹でたての麺をたぐれば、シルクタッチの質感と、伸びやかなコシに箸が止まらない。注文を受けてから揚げる熱々の天ぷらも必食だ。
九州豊前 うどん武膳|ぶぜん(最寄駅:小川町駅)
澄みきった美しさの“第三の麺”と“黄金出汁”
『九州豊前 うどん武膳』の麺は、讃岐でも稲庭でもない、もっちりと弾力のある“第三の麺”だ。半透明の美しさとしなやかさに心奪われ、口に含めば思わず「気持ちいい~」と声が出てしまうほど、口当たりが滑らか。自慢の“黄金出汁”は、良質な昆布や魚系のダシを使用。それを毎日ひいているから、非常に香り高い。夜は一品料理のほか、宴会メニューも充実。飲みの利用もできる。
博多うどん よかよか(最寄駅:有楽町駅)
ふわっ、つるっな“やわ麺”に博多っ子も納得!
『博多うどん よかよか』の麺は、「持ち上げると切れるくらいの柔らかさがたまらない」と九州出身者から大きな支持を受けている。それを包み込むのがほんのり甘く、やさしい味わいのツユ。昆布とイリコ、カツオ節の旨みと香りをしっかり引き出したダシ、寝かせてまろやかさを出したカエシが使われている。心と体に染みる旨さに、ほっこりすること必至だ。
伊勢系
「日本一コシがない」と称される、ふにゃっと〝やわやわ〟なうどん。
色が濃いたまり醤油と天然ダシを利かせたタレが特長だ。
店によっては少しコシがあったり、トッピングを変えたり、実は千差万別。
人形町 徳(最寄駅:水天宮前駅)
店オリジナルの食べ方でいただく麺は伊勢人も太鼓判
無料トッピングの揚げ玉は桜エビ入り。また自家製ハヤシと合わせるなど、『人形町 徳』にしかないオリジナルの伊勢うどんがうれしい。そんなサクサクの揚げ玉や深い味わいのハヤシルウがしっかりと絡んでも、重さはなくペロリとたいらげられるほど麺がふわっふわだ。
二代目 甚八(最寄駅:本郷三丁目駅)
三重県鈴鹿産の小麦を使った贅沢な打ちたて麺
『二代目 甚八』の麺は、注文後15分から20分かけてしっかり茹で、もっちり柔らかな食感を生み出す。カツオ節の味がふわりと香るたまり醬油ダレと生卵が、熱々に茹でられた麺によく合う! 野菜のおかずや天ぷらも楽しめ、男女問わず人気だ。
久緒羅珈琲(最寄駅:大門駅)
コーヒーにこだわる喫茶店の平日ランチ限定メニュー
『久緒羅珈琲』では、平日のランチタイム限定で伊勢うどんを提供中だ。「余計なものを加えず、シンプルかつ、丁寧に」という心がけのもと、薬味がのった山口製麺の麺とタレで、伊勢の地元民と同じような食べ方で提供する(お好みで卵を加えても◎)。しょっぱすぎないたまり醬油ダレに麺がよく絡み、そのやさしい味わいに心が和む。
名古屋系
名古屋といえば「きしめん」。のどごしの良いツルッとした平打ち麺で、カツオ節などのスッキリしたダシでいただく。
都内でも本格派の味が楽しめる店がいくつかある。
川むら(最寄駅:日暮里駅)
老舗蕎麦屋の丁寧なカツオダシをきしめんで堪能
『川むら』は明治のはじめに創業し、昭和21年からは谷中銀座の入口近くに店を構える老舗蕎麦屋。名古屋とはゆかりはないが、お客さんの要望できしめんを置いている。杵打ち製法の生きしめんは、茹でると半透明に仕上がる。鹿児島県枕崎産の本枯れ節で丁寧にとったカツオダシで作る醤油味のツユと相まって、口の中をつるりとくすぐる滑らかさだ。
関西系
透き通った上品な色のツユに、ゆったりと横たわるやさしい食感の麺。
具には甘めの味付けのもの、肉は牛肉を使うのが特徴的だ。
じんわりと沁みる丁寧なダシと共に、はんなり柔らかな麺を味わいたい。
京うどん きつね庵(最寄駅:東銀座駅)
スッキリおダシをたっぷり吸ったうどんにホロリ
『京うどん きつね庵』の、透明なツユにたっぷり浮かぶ“お揚げさん”は、京都の老舗『とようけ屋山本』から。卓上の七味は350年以上続く『七味家本舗』のもの……と書くと、超こだわりの一杯に思えるが、どちらも日常的な京食材。関東で見かけないだけなんだとか。誰でも気軽に立ち寄れる店を目指す店主が作る、肩の力が程よく抜けた絶品の一杯だ。
浪花かすうどん むねひろ 田町店(最寄駅:三田駅)
希少なり! 専門店のかすうどん
『浪花かすうどん むねひろ 田町店』は東京ではまだまだ数少ない、大阪の「かすうどん」を味わえる店。「かす」とは「油かす」のことで、牛のホルモン(主に小腸)を高温で揚げたもの。うどんは東京の客の好みに合わせてほんの少し固めに仕上げている。それでも食感はふんわり。かすの香ばしさと、やや甘いツユのコンビネーションに麺がしっくり馴染む。
食べるほどにハマった”やわうどん”座談会
東京ナイズされたご当地”やわうどん”に新時代の幕開けを見た
編集・戎「まず言わせてください。ボク、“やわうどん”にハマりました!」
ライター・赤谷「わかる!」
ライター・菜々山「私も!」
戎「元々、コシがガッツリある讃岐派だったんですけどね」
赤「讃岐はまず小麦の味が立つけど、口の中からスッとなくなる“やわ系”はツユとのバランスにも集中できる印象」
菜「讃岐は食べるのに意外とパワーがいるから、疲れている時は、“やわ系”だよね」
戎「そうそう、あと二日酔いの時もいいですよね」
菜「わかる! 煮干しが利いた『久留米うどん』を食べたら一発で治りそう」
戎「『よかよか』もそうですけど、福岡系のうどんは、ダシがやさしいんですよ!」
赤「あと今回調査してわかったのは、少しずつ伊勢うどんが関東にも広がっていること」
菜「そうなの? コシ重視な関東ではウケそうにないけど。やわ系というより、ふわふわ系じゃない?」
赤「そのふわふわ感がいいんですよ! タレがしみ込んでよく絡むし。それに肉をのせたり、ハヤシソースと合わせる“東京系伊勢うどん”もあるんです」
戎「伊勢ではないですが、ボクが取材した中では『武膳』が進化系でした。讃岐でも稲庭でもない“第三の麺”を目指しているそうです」
菜「おもしろい! 新感覚のうどん、ぜひ食べてみたい」
赤「近いうちに“うどん多様化時代”がやって来ると思います」
戎「東京では、ここ10年ほど讃岐のひとり勝ちでしたからね。この取材でうどん新時代の幕開けを見たような気がします。ますます日頃から食べ歩いておかなきゃ!」
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