冬至から正月にかけては、しめ鯖がうまい!
そんな築地もすでに豊洲移転し、オイラも高齢者。もはや、「大量に食べたい」願望は失せ、季節のものをちょっぴり味わう方向に転じております。
季節のものは、出まわりはじめの「はしり」の時期を過ぎれば値段も安く、しかもおいしいものが手に入ります。昔から、冬至といえば、かぼちゃが知られるように、本来かぼちゃは秋から冬に出まわるもの。その時季に食べるのが味もよく、身体にもいいということです。
そんな食べ物と季節の関係を示すものが、二十四節気(にじゅうしせっき)だと感じています。現在の暦は、西暦(太陽暦)にもとづく新暦ですが、日本では明治5年まで旧暦が1300年余りも続いていました。その間、春夏秋冬をよりわかりやすく示し、「暮らしの目印」として根づいていたものが二十四節気ということです。
なじみのある、立春(2月4日頃からの2週間)、立秋(8月8日頃からの2週間)も二十四節気のひとつであり、夏至(6月21日頃からの2週間)や、冬至(12月22日頃からの2週間)は、日没時間との関係でめぐる季節の節目にもなっています。
ただ、正直言って、冬至のかぼちゃでは酒もすすみません。そこで、オイラのおすすめは、しめ鯖です。
二十四節気の冬至の期間は、おおむね12月22日頃からの2週間。意外なことに、新年1月5日頃までも冬至の時季となる。ならば、年末にしめ鯖を手作りし、正月に食べるのも冬至の酒肴の楽しみ方なのです。
鯖は「サバ」と書くよりも、魚偏に「●(うおへんに青の下が円)」と書くほうがぴったりの魚です。「秋鯖」が脂がのりおいしいとされますが、それは北海道や東北産での話。冬場に東京の魚屋に多く並ぶ九州の鯖は冬が旬。とくに長崎の鯖などは年末あたりに丸々と太ったものが安価に手に入ります。もちろん、脂ものっていて、まさに「冬至ならではの味」なのです。
「なんだ、しめ鯖かい」と思わないでいただきたい。たしかに、酢でしめた鯖なのですが、手作りのしめ鯖は、酢につけている時間がとても短いため、「酢でしめる」というよりも、塩でしめ、酢で鯖の脂分を落とすという限りなくレアなもの。居酒屋で出てくるしめ鯖とも違い、また、スーパーで売っているノルウエー産の解凍ものは論外、天と地ほど違うおいしさが楽しめるのです。
ただし、鯖は「アシが早い」ともいわれ、鮮魚でも急速に鮮度が落ちやすい魚。魚屋では、「しめ鯖」にできる鯖か否かを、必ず尋ねて求めましょう。
しめ鯖の作り方「塩ふり一晩、酢じめ10分」
しめ鯖の作り方はいたって簡単。「塩ふり一晩、酢じめ10分」で、超レアな絶品しめ鯖が出来上がります。
ざっくりとした作り方をご紹介いたします。
●しめ鯖、仕込み編
1)魚屋で真鯖1尾を「三枚おろし」(身+骨+身)にしてもらう。
2)そこに粗塩をふり、水切りつきのステンレス製バットに並べ、ラップをして一晩屋外に置く。最低でも12時間以上は置きたい。粗塩の量は鯖1尾でひとつかみ、たぶん30gぐらいでしょう。※オイラの場合は、粗塩ふりまでを魚屋でやってもらいます。
3)翌朝、鯖を流水でさっと洗い、キッチンペーパーで水けをとる。
4)鯖の身に、ほぼ同じ大きさの昆布をのせ、鯖の背(皮側)を下にしてガラス容器に入れ、好みの酢をいっぱいに注ぐ。オイラの好みは、酢がまろやかな京都の千鳥酢を使い、200~300mlくらいの量で鯖の身が隠れるまでつける。
5)酢につける時間は10分! この間、5分たったら、身を裏返し、鯖の背が上にくるようにして、さらに5分つける。
6)鯖を酢から引き上げたら、一緒につけていた昆布を身の上にのせ、ラップできっちりまく。仕込みの作業としてはこれで完了。冷蔵庫に半日置けば、味もなじみ、食べ頃となる。
●しめ鯖、食べる直前編
7)キッチンペーパーに昆布をはずした鯖を置き、身の中骨を骨抜きでていねいに抜く。※大小で、だいたい20本はあると思ってください。
8)身を返し、背の薄皮をはがす。※頭に近い部分からはがすと、ピーっという感触で、きれいにはがれます。
9)これで出来上がり。あとは、包丁で食べやすく切れば、絶品のしめ鯖! 添え物にはしめていた昆布を刻み、すだち、わさびで味わいたい。
文・撮影/沢田浩
さわだ・ひろし。書籍編集者。1955年、福岡県に生まれる。学習院大学卒業後、1979年に主婦と生活社入社。「週刊女性」時代の十数年間は、皇室担当として従事し、皇太子妃候補としての小和田雅子さんの存在をスクープ。1999年より、セブン&アイ出版に転じ、生活情報誌「saita」編集長を経て、書籍編集者に。2018年2月、常務執行役員パブリッシング事業部長を最後に退社。