【重乃井】「至高のツユ」で味わう「うどんのおかず」的鯖寿司
続いて向かったのは、市内中心部に位置する『重乃井』。昭和41年創業、宮崎で初めて釜揚げうどんを提供した、「元祖釜揚げうどん店」だ。
メニューはきっぱり、釜揚げうどんのみ。有名人のファンも多く、キャンプ入りしたプロ野球選手たちや、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督やソフトバンク王貞治球団会長も訪れるといううどん店でも、鯖寿司が提供されている。
「な、なんで鯖寿司があるんですか!?」
またもうどんの話より前に、鯖寿司トークをはじめるジェンヌさん。
「鯖寿司は先代である母が、当初から作って提供していました」と、2代目である女将の伊豫(いよ)展子さん。
伊豫さんの母は、香川出身。子どものころから家で作っていたうどんをベースに作りあげた。
それを受け継いだ展子さんもまた、一杯のうどんに真摯に向かい合っている。揚げ玉ひとつとっても、「揚げ玉用」に調理。そのうえ油っこくならないように、なんと木綿袋に揚げ玉を入れて「洗濯機」(!!)で「徹底的に油抜き」するほどだ。
そんな重乃井のうどんは、初代のころからすべて変わらぬ製法で作られる。麺は最高級の小麦粉を使い、手打ち、手切り。そして、羽釜でていねいに茹で上げる。タイマーではなく、うどんの色や動きの変化で茹で上がりを見極めている。
そして、ツユは重乃井のいのちともいえる、「至高のつゆ」だ。
大阪・堺の昆布問屋に重乃井専用に仕入れてもらった北海道稚内産の折昆布と、長切り昆布をたっぷりと贅沢に使用。
そして長崎産の極上手削りサバ節・カツオ節、高千穂産のしいたけも加えたダシに、特別に作ってもらっているという醤油とみりんだけで味を決める。塩、砂糖は一切使わない。
「母が目指したのは『お吸い物』の味。たんなるうどんのツユではないんです」。レシピはなく、「舌で覚えた」一子相伝。
伊豫さんは「35年作っていても、毎日微妙に調整しないと同じ味にはならない。日々、勉強です」という渾身のツユの美味しさを味わってもらうべく、テーブルには七味などの調味料はなし!