徹底的にうどんに合うよう作られた鯖寿司
そんな繊細なツユの味わいを邪魔せず、なおかつベストマッチな味わいの鯖寿司は、国産のサバを使用。酸味は控えめに〆る。シャリも酢は控えめ、甘みのある味わいに仕上げてある。サバは薄く切って、自家製の型でシャリと合わせて押し上げて完成。こちらでも中にワサビが入っている。
鯖寿司がなぜ、提供されるようになったかは伊豫さんの知るところではなかったが、「鯖寿司は、徹底的にうどんに合うように作り上げたもの」らしい。
ちなみにこちらの鯖寿司は「魚寿司」。宮崎のうどん店ではかつて、アジ、イワシ、サバが「魚寿司」として提供されていたが、いまは、おおむねサバだそう。
さて、重乃井自慢の「釜揚げうどん」(並 700円)は、ツユに宮崎のうどんで一般的なイリコを使っていない。サバ節で旨みを、カツオ節で香りを出している。
茹で上がったうどんを、ツユにつけていただく。ほわっとやわ肌、口当たりのよいうどんが、良質な昆布、カツオ節、サバ節、しいたけの奏でる風味豊かでジワジワ旨みが広がるダシにからみ、心の底から「ああ、美味しい」と声が漏れる味わい深さ。
そして鯖寿司へ。さりげない〆加減で主張が控えめ、旨みだけがたったサバと、もちもち甘めのシャリの鯖寿司はどこか「おにぎり」を思わせるほっこり感。やさしい美味しさ!
さてと、うどんをもう一度。そして鯖寿司をもう一度。……なんですか、この違和感のなさ。なんですか、このすんなり感。
「うどんがごはんで、鯖寿司がおかず」、まるでそんな感じ!! 常連客はうどんが来るまでに鯖寿司を食べはじめても、必ずうどんと一緒に食べるためにひとつはとっておくというのも納得だ。
そして、最後は、ツユを茹で汁が入った丼に入れて味わう「うどん湯」で。まさに「上品なお吸い物」で、その美味しさったら筆舌に尽くしがたいものだけれど、これがまた鯖寿司と最高のマリアージュ。
ツユの中の「サバ節」が、鯖寿司の「何」かを目覚めさせたかのような、いきいきした味わいに。「鯖寿司が口の中で回遊する」ような、衝撃体験であった。
■『重乃井』
[住所]宮崎県宮崎市川原町8-19
[電話番号]0985-24-7367
[営業時間]11時~19時(18時半LO)
[休日]金(月1回連休あり。要確認)
[交通]JR宮崎駅から徒歩20分