嫌いな食べ物の多い大先輩から学んだこと
甘いシロップがダメなら思い切って、富澤さんの好きなものをかけたらいいのではないか。
そう考えて、富澤さんの好きなコーヒーをかき氷にぶっかけたら、案の定嬉しそうに食べて「このかき氷最高」と言っていた。
これはもうかき氷とは呼べない、氷多めのアイスコーヒーだろ、とは言わなかっただけ、褒めてもらいたい。
「好き嫌いはダメって言われませんでした?」
と聞くと、富澤さんは
「苦手なものって、ダメと言われて無くせるものではない。本当に嫌いなものは、我慢しても難しい。大人になったのだから、苦手なものは避けていいんだよ」
と胸を張って言っていた。
なんだかカッコよく見えた。
そう言われてみれば、大人って子供の頃と比べて嫌なものを回避できるようになる。それは金銭的にもそうだし、物理的にも選択肢が増える。
それなのに、わざわざ苦手なものに着手してメリットはないのではないか。
自分が喜ぶ選択をし続けるのが大人なのではないだろうか。
富澤さんが、続けて
「子供の頃は、何が嫌いか自分が知る期間で、大人になったら好きなものを選択してくんだよ」
なんて言うもんだから、なんだかそんなもんなのかという気がしてくる。
嫌いな食べ物が多いのは、子供だと思っていたけれど、別に無理にその食べ物と対峙しようとせず、いちごシロップへ和解の手を差し伸べることなく別々の人生を歩むという選択をするのも、ある種、大人になったということなのだろう。