「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』のクイズ」では、三択形式のコラムで読者の知的好奇心に応えます。第19回のテーマは「おにぎり」「おむすび」「にぎりめし」です。 出題:三井能力…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』のクイズ」では、三択形式のコラムで読者の知的好奇心に応えます。第19回のテーマは「おにぎり」「おむすび」「にぎりめし」です。
出題:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
日本人のソウル・フード
【問題】
日本人のソウル・フードとも言える「おにぎり」「おむすび」「にぎりめし」。この3つのうち、記念日が存在しないものが一つあります。その存在しない記念日とは、つぎのうちどれでしょうか?
(1)6月18日のおにぎりの日
(2)1月17日のおむすびの日
(3)2月4日のにぎりめしの日
答えは次のページ!
6月18日と11月18日は、同じ記念日
【答え】
記念日が存在しないのは、(3)の「にぎりめしの日」です。
(1)の「おにぎりの日」は、6月18日と11月18日。なんと年に2回もあるんです。
1987年11月に石川県鹿西(ろくせい)町(現・中能登町)の杉谷チャノバタケ遺跡の竪穴式住居跡から、日本最古の「おにぎりの化石」が発見されました。鹿西町が「おにぎりの里」として、地域おこしのために6月18日を「おにぎりの日」とし、2002年10月1日付で日本記念日協会から記念日の認定を受けました。日付は鹿西の「ろく(6)」と、毎月18日の「米食の日」とを合わせたものです(参考[1])。また、発見されたのが11月だったことから、2015年には中能登町が条例を施行し、6月18日に加えて11月18日も「おにぎりの日」としました。中能登町では日本最古のおにぎりにちなみ、古代米を生産しています。
(2)の「おむすびの日」は、1月17日です。
「ごはんを食べよう国民運動推進協議会」が2000年に制定し、「公益法人米穀安定供給確保支援機構」が2018年に活動を引き継いだ記念日です。ごはんのおむすびだけでなく、人と人との心を結ぶ「おむすび」の日を作ろうと全国公募し、1995年(平成7年)に発生した阪神淡路大震災でボランティアによるおむすびの炊き出しが人々を大いに助けたことから、いつまでもその善意を忘れないようにと大震災の起きた1月17日がその日付とされました(参考[1])。
(参考)
[1] 一般社団法人 日本記念日協会
https://www.kinenbi.gr.jp/
[2] 6月18日はおにぎりの日です。(中能登町)
https://www.town.nakanoto.ishikawa.jp/soshiki/kikaku/5/2/2/1389.html
[3] 11月18日も「おにぎりの日」です。(中能登町)
https://www.town.nakanoto.ishikawa.jp/soshiki/kikaku/5/2/2/1390.html
[4] 1月17日は「おむすびの日」です(米穀安定供給確保支援機構)
https://www.komenet.jp/komenetmanager/wp-content/uploads/be93a261b7f862428b32f429c12dd927.pdf
米食文化の歴史をたどる
稲作が始まったのは7000年以上前
紀元前5000年頃(今から約7000年前)とみられる中国浙江省河姆渡(かぼと)遺跡(新石器時代の文化)から、炭化米や農具、陶器などがみつかっており、この頃にはすでに稲作が行われていたことが分かりました。朝鮮半島南部を中心とする地域からは、約2500~3000年前の炭化米がみつかっています。日本には朝鮮半島を経由して稲作が伝わったと考えられています。
日本におけるおにぎりの歴史
前述の杉谷チャノバタケ遺跡は、約2000年前(弥生時代)の環濠集落遺跡です。発掘されたのは炭化した米粒の塊で、現在のおにぎりのようにお米を炊いて握ったのものではなく、おそらくお米を蒸した後に焼いたものと考えられており、正式には「チマキ状炭化米塊」といいます。奈良時代の『常陸国風土記』には「握飯(にぎりいい)」の記述があり、これが現在のおにぎりにつながる料理の最古の記述とみられています。
現代のおにぎりの直接の起源は、平安時代の「屯食」(とんじき)だと考えられています。これは蒸したもち米を握り固めたもので、貴族が催しの際に下仕えの者に振るまったそうです。鎌倉時代の承久の乱(1221年)の際には、幕府側の武士に梅干し入りのおにぎりが兵糧として配られたといいます。また、鎌倉時代末期には、現在のようにうるち米(もち米でない普通のお米)が用いられるようになったそうです。
戦国時代には、おにぎりは武士の兵糧として重宝されました。
江戸時代には弁当に用いられ、五街道を行き交う旅人や、農作業を行う農民などが食したそうです。また、アサクサノリの養殖が始まった元禄時代に、海苔を巻いたおにぎり(海苔巻き)が発明されたといわれています。
1885(明治18)年に、日本鉄道宇都宮駅で、黒ゴマをまぶした梅干し入りおにぎり2個とたくあん2枚を竹の皮に包んだものが販売されました。これが日本初の「駅弁」だとの説があります。
「おにぎり」、「おむすび」、「にぎりめし」の違いは?
「おにぎり」、「おむすび」、「にぎりめし」は、結論から言うと、呼び方が違うだけで、いずれも同じものを指しています。
「おにぎり」と「おむすび」については、
・三角形に握られたのが「おむすび」で、それ以外の形状は「おにぎり」
・東日本では「おむすび」、西日本では「おにぎり」と呼ぶ
など諸説ありますが、いずれも決定的な違いを与えるものはありません。
呼び方については、最初もち米を蒸して握ったものを「にぎりめし」と呼び、それが「おにぎり」とも呼ぶようになりました。「むすび」という呼び方が見られるのは江戸時代以降で、公家や大奥など上流階級の女房詞に端を発するようです。もっとも一般的なのは「おにぎり」で、NHKのアンケート調査によれば、約90%の人が「おにぎり」と答えたそうです。ちなみに、大手コンビニチェーンでは、「おにぎり」と呼ぶところもあれば、「おむすび」と呼ぶところもあります。
(参考)
[5] イネのふるさと(米穀安定供給確保支援機構)
https://www.komenet.jp/bunkatorekishi/bunkatorekishi01/bunkatorekishi01_1
[6] 日本最古 一目で「おにぎり」 第一発見者・栃木さんに聞く(北陸中日新聞)
https://www.chunichi.co.jp/article/274441
[7] おにぎりの歴史(一般社団法人おにぎり協会)
https://www.onigiri.or.jp/history