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大人の耳を持った音楽ファンが、明菜を認めた

この作品の原案はエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされている飯田久彦のものだ。飯田久彦はロカビリー黄金時代にシンガーとして人気を得た後、ビクター・レコード(当時)でピンク・レディーなど数々の大ヒットを生んだ。

自殺未遂騒動、年齢などが理由で、アイドルとして言わば賞味期限切れとなった中森明菜を再生するアイデアは無いものだろうかと芸能関係者から飯田久彦は相談を受けた。そこで彼は中森明菜が無類の歌好きで、かつ希代の歌上手であることに着目して、昔ながらの歌謡曲の制作スタイルでアルバムを作ることを思い立った。そんな裏話をかつて飯田久彦は教えてくれた。また、フル・オーケストラをバックに歌うことは非常に難しく、高度な歌のスキルがなくてはならず、中森明菜は若手シンガーの中では唯一、それを持っていたとも語っている。

全盛時のような大ヒットとまではいかなかったが、アルバム『歌姫』は中森明菜に新しいファン層を開拓させた。“アイドルにしては歌が上手い”ではなく、“本当に歌が巧いシンガー”として新たなファンを獲得したのだ。これまでのアイドルとしての中森明菜ファンだけでなく、大人の耳を持った音楽ファンが中森明菜を認めたのだ。アイドルとしてステージを去った山口百恵とは異なる大人のシンガーに変身した、それが中森明菜なのだ。

中森明菜のアルバムの数々

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)

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