壊血病は過去の病ではなかった!
壊血病は、食料事情が悪く、しかも病気の原因も分かっていなかった数百年も過去の時代の病気で、新鮮な食べ物が豊富な現代の先進国では起こらないだろう、と考えられがちです。ところが、壊血病患者の発生は、毎年報告されています。
2008年のアメリカで見つかった壊血病患者は、喫煙習慣があり、食事は電子レンジで加熱調理できる冷凍食品の詰め合わせパック、スープ、野菜の缶詰などで、新鮮な野菜や果物はほとんど食べていませんでした。来院時には足に大きなあざがあり、呼吸困難に陥っていたそうですが、1日1gのビタミンCを投与したところ、2週間後には完全に症状がなくなったそうです。
2002年に日本で報告された壊血病患者は、慢性腎不全のため長期間食事制限の指導を受けており、新鮮な野菜や果物をほとんど摂っていませんでした。腎臓の移植手術を受けたのですが、症状は一向に良くならず、体中から出血し、悪化していきました。血液検査でビタミンCの血中濃度が極めて低いことが判明し、1日1gのビタミンCを投与したところ、数日で症状が治まり回復したそうです。
近年の日本では、糖尿病などの生活習慣病が増え、食事制限の指導を受ける患者が増加していますが、食事量を減らすことのみに重点を置くと、必要な栄養素が不足してしまいます。アルコール中毒者、ヘビースモーカー、一人暮らしのお年寄りなど、新鮮な野菜や果物を十分に摂取していないと、ビタミンCが足りない状態に陥っていることもあります。
イヌやネコなど多くの動物はビタミンCを体内で合成できます。しかしヒトやサルなどの霊長類は体内で合成することが出来ず、食物から摂取しなければなりません。壊血病にまでならなくとも、バランスの悪い食生活などで、知らず知らずのうちに慢性的にビタミンCが不足している可能性もありますので、注意が必要です。
(参考)
ビタミンCの真実(東京都健康長寿医療センター研究所)
https://vit-c.jp/vitaminc/vc-08-2.html