かつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、入学試験シーズン真っただなかに集中連載でお届けします。
物事は、プラスとマイナスのとらえ方をされることがある
同じ物事に対して、人はプラスのとらえ方と、マイナスのとらえ方をすることができます。たとえば、台所に洗っていない食器をたくさんためている人がいたら、「だらしない」人だと思うかもしれません。
しかし、ある程度たまってから一度に洗うほうが効率がよいので、「合理的な考え方」な人だともいえますよね。
仕事で「作業が早い」という指摘は、頭の回転が速いというようにもとらえられますが、逆の視点からでは、「向き合い方が雑だ」といえるかもしれません。反対に、「作業が遅い」ということは、しっかり確認しながら進めているということでもあり、「慎重で注意深い」と言い換えることもできます。
みんなに分け隔てなくやさしいという性格も、ときには、「八方美人」という言い方をされることがあります。
子どものよくない行動も、ポジティブにとらえたい
このように、とらえ方によって物事は真逆に受け取ることができるものです。ポジティブな面からの意味と、ネガティブな面からとらえた意味がそれぞれには含まれていて、そのどちらの側からでも受け取ることができるのです。
子どもの行動も、よくないことだと思っても、ポジティブな意味からとらえるように心がけてみてください。
臆病でなかなか行動できない子どもは、「用心深い」しっかりした性格だともいえます。いろいろなことに飽きっぽい子どもは、「好奇心旺盛」なわけです。このような考え方をすると、親も精神的にラクになります。また、プラス方向に言葉を置き換えて、ほめてあげれば、子どももうれしいと感じます。
ただ、この「言葉の表裏」の境界線が、いまいち曖昧なものがあるということに気をつけてください。たとえば、「まじめだよね」と言われても、どこかほめられていないように感じませんか。「まじめ」という言葉の裏には、なんとなく、「融通が利かない」というメッセージが込められているように受け取る人もいると思います。