素材にこだわって、ブランド価値を再構築
さて、そんな『松屋』の焼豚だが、ブランド価値を再構築するために行ったのが、素材への大きなこだわりだ。
店頭に並ぶメインの商品は「謹製」と「黒豚」の焼豚。これを求めて行列ができる。「謹製」は群馬県産の上州せせらぎポーク、「黒豚」は鹿児島県産の渡邊純粋黒豚を使用している。
「謹製」はバラと肩ロース、「黒豚」はモモで作り、出来上がりの大きさでその日の値段が決まる。例えば「謹製」の最も小さいサイズの小粒(205g)は1050円。小梅(240g・1200円)、梅(300g・1500円)、竹(350g・1750円)、松(385g・1900円)、千貫(バラ:420g・2100円、ロース480g・2400円)とある。
営業は基本的に毎週土曜日のみ(お祭り等で一部営業することもあり)。その他の曜日は仕込みや素材探しなどに充てているという。
焼豚の調理工程の一部を見せていただいた。カットして形を整え、糸を手でギュッと巻いた豚は、焼豚を作るときに出るラードをたっぷりと使って揚げ焼きのようにし、きつね色に焼き上げている。
このラードには2種の豚の脂が溶け込んでおり、両方の旨みが混ざったもの。揚げ焼きにすることで、脂がいい感じに落ちるだけでなく、旨みをより濃厚にまとう。ラードには塩を入れており、ほんのりと下味がつけられるのだ。
揚げ焼き後、1日寝かした焼豚は東京・下町の味らしく、醤油と三温糖、塩というシンプルかつキリリとした味わいの本ダレに30分ほど漬け込む。本ダレは5時間ほどかけて毎回作られ、栃木県産唐辛子のピリッとした辛さがアクセント。豚の脂の深みと甘みをより引き立たせている。
持ち帰り時に漂うタレの芳しい香りに、思わずお腹が鳴ること請け合いだ。
ちなみに、開店当初約50本を仕込んでいたが、すぐに売り切れてしまっていた。それが現在では70本ほど準備できるようになったため、日にもよるが午後早めまではまだ買えることもある。