「今日を生きよう」 テンプターズがカヴァーした名曲
極私的3曲のその3はすごく迷ったがシーナ&ロケッツ名義ではもっとも新しい「今日を生きよう」にした。
この曲は元々はイタリアで活動していたロークスの曲をアメリカのバンド、グラス・ルーツが英語ヴァージョンにして全米ヒットさせた。その英語ヴァージョンを、なかにし礼が日本語にしてGS(グループ・サウンズ)のテンプターズが1967年にカヴァーした。
“シーナはGSが大好きやった。特にテンプターズはショーケン(萩原健一)と電話で話したことがあるくらいファンやった。テンプターズはオレたちも大好きでとても影響を受けたバンドやったから、やれて良かった”
シーナの生前に録音されていた「今日を生きよう」は元々はアルバム化のために録音されたわけでは無かった。
“ふつう、多くのバンドはレコーディングが終わるとすぐにスタジオを離れる。オレたちはレコーディングが終わってもスタジオ使用の残り時間があればもったいないって言うて、スタジオ時間の無くなるまでセッションして色んな曲を録音したんね。「今日を生きよう」もシーナもオレも好きな曲やから、じゃあ、やってみようってことになった”とレコーディングエピソードを語っていた。
“恋があるなら何もいらない/おまえがいれば何もいらない”の愛は鮎川誠の愛したラヴ&ピースなロックであり、おまえはシーナのことだった。今はそう思えてならない。
“オレはもう一度生まれ変わってもシーナと愛し合う”
鮎川誠は生前、そう語っていた。とても月並みの表現ではあるが、今頃、天国でシーナと再会してロックしている。それは絶対にそうなっていると思う。
岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。