駄菓子は約100種
色とりどりの駄菓子は約100種。麩菓子、きな粉棒、あ、ラムネもある。取材日は境内で催し物があったようで、お客が多く、集まった子供たちがカゴいっぱいにおやつを選んでいた。かと思えば親世代も、いや、おばあちゃんまで目の色変えて物色中(笑)。
駄菓子屋という存在は、大人にとって幼少期の幸せの記憶を蘇らせるタイムマシーンのようなもの。その証拠に「家族連れの40代半ばのお父さんが、店で売っているおもちゃのグライダーを懐かしがってね、奥さんに『ママ、僕これ買っていい?』って。かわいいわよね」。取材していた私だって昔好きだったポン菓子を手にほくそ笑んでいる。今、脳みそは完全に小学生だ。
そんな駄菓子屋も次々と消えつつあることは周知の通りだろう。少子化が背景にあるが、コンビニで安く売られるようになったことも大きい。昔は日暮里に駄菓子の問屋街があり、内山さんも風呂敷を担いで仕入れに行っていたそうだが、今はそれもなくなった。月の利益は平均2万円ほど。結婚54年になる夫もいるが、実は「ひとつ屋根の下に暮らしたのは数日だけ。店を背負ってる私を理解してくれてずっと別居なんです」
お得意さんだった子が大きくなり、自分の子供やその赤ちゃんも
それでも家業を守り続けるのは?率直に問えば、「”お得意さん”だった子が大きくなって、自分の子供や、またその赤ちゃんを連れて来て抱っこさせてくれたり、3代にわたって通ってくれる。こんなうれしいことはないわね。お金に変えられない。これを生きがいっていうのね」単に駄菓子を売るだけじゃない。242年の歴史を背負う店の”味”は内山さんの人生そのもの。客にとっても、今を生きるため自分の原点に戻れる場、心の故郷のような”味”なのかもしれない。
[住所]東京都豊島区雑司ヶ谷3-15-20(子母神境内)
[電話]非公開
[営業時間]10時~17時
[休日]雨・雪・台風などの日
[交通]地下鉄副都心線雑司ヶ谷駅1番出口などから徒歩4分
撮影/西崎進也、取材/肥田木奈々
※2023年5月号発売時点の情報です。
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