「全日本さば連合会」広報担当サバジェンヌこと池田陽子さんによる「サバジェンヌが行く〜至福の鯖百選〜」第79回目となる今回から、福井編へ突入! 今回はJR福井駅に隣接する複合施設「ハピリン」内のサバ蕎麦、サバラーメンをご紹介します。
画像ギャラリー2024年春、北陸新幹線が金沢からの延伸開業を控え、注目を集める福井県。福井といえば、日本屈指の「サバグルメ王国」。
サバというと県内では若狭エリアが位置する嶺南のイメージが強いけれど、県庁所在地・福井市を有する北部エリア「嶺北」でもさまざまなサバグルメが堪能できます。今回は、福井市でぜひ味わいたいサバグルメを一挙ご紹介!
北陸新幹線開通で今後は東京から2時間台で福井へ!
JR福井駅到着! これまで東京から乗り換えがマスト、3時間以上かかっていた福井市。北陸新幹線の延伸によって、ズバッと直通、2時間台で「福井市サバグルメ」の扉が開くなんて(涙)!
福井名物の合体!「焼き鯖おろしそば」
到着したらまず向かいたいのが、JR福井駅に隣接する複合施設「ハピリン」。なんてったって、ここは「サバと麺の殿堂」! なんとサバを使った個性派蕎麦と、ラーメンが味わえるのだ。こんなサバらしいビル、日本唯一!!!
ハピリン1階に位置する『あみだそば 福の井』は、福井県産特上蕎麦粉を使用したこだわりの十割そばが人気の名店。福井を代表する郷土料理「越前おろしそば」、そして日本初の「焼き鯖おろしそば」を味わえる。
以前、東京の福井県アンテナショップ『食の國 福井館』のみで提供され、天ぷらそばを上回る大人気だった逸品が、地元・福井でも味わえるようになったのだ。
「おろしそばとサバという、福井の名物コラボということで、好評です。とくに土・日は焼き鯖おろしそばが一番に完売になりますね」とうれしそうに語るのは考案者である永見雄二さん。息子である耕己さんと「元祖焼き鯖おろしそば」の店として爆走中だ。
唯一無二の焼き鯖おろしそばに情熱をかける永見さんの、アツい想いは過去の記事を読んでいただくとして、ともかく、「元祖焼き鯖おろしそば」の店として気合が入りまくっている。
以前は壁に貼られるのみだった焼き鯖おろしそばは、看板料理のおろしそばについでメニュー表入り。その本気度たるやハンパない。
なんとメニューから、そば屋の定番「えび天ぷらそば」が消えている!! 「焼き鯖おろしそばに注力するべくやめました」と雄二さん。
「うちは焼き鯖おろしそばと心中する覚悟です」と苦笑する耕己さん。大好評の焼き鯖おろしそば。けれど、まだまだ雄二さんが気になっていることがある。「食べ方」だ。
「もっともおいしい食べ方が、いまいち浸透していないんですよね」と雄二さん。ここで、雄二さんのアツい叫びを福井の中心からお伝えしよう。
「混ぜてほしい!」
焼き鯖おろしそばの食べ方の大きなポイントは、おろしそばの上にのった焼きさばをよーーーーーーーく混ぜること!
「サバの脂がダシにしみこんで、一体化してこそおいしくなるんです」と雄二さんは力説する。
たしかに、こんなに麗しく黄金色に焼き上がった美しいサバをほぐすのは躊躇するのもやむをえない。
しかし、ここは心を鬼にして、雄二さんの魂の叫びに従ってほぐすべし。
ホグホグホグホグ。サバの身をほぐしたところで、大根おろしとともに、そばをズズズズズ。
ああー!
サバの旨みと、力強い味わいのそば。スッキリした辛みの大根おろしは、拮抗するサバとそばに降り注ぐ雪のよう。あまりのナイスサバランスに毎回うっとり。
永見さん曰く、「健康によいサバと蕎麦、大根おろしの合体。まさに『完全食』」。たしかに、食べるうちに力がみなぎる気がする。福井市観光にむけて、がっつりエネルギーチャージを!
■『あみだそば 福の井』
[住所]福井県福井市中央1-2-1 ハピリン 1階
[電話番号]0776-43-0739
[営業時間]10時半~20時半(20時LO)
[定休日]無休
[交通]JR北陸線ほか福井駅より徒歩1分
[URL]https://www.amidasoba.com/
ラーメン文化があまりない福井で食べる「鯖らーめん」
続いてハピリンの1階から2階へ、いざ移動。『いちろくラーメン ふくい駅前店』で「鯖らーめん」を味わっていただきたい。
じつは、福井はあまり「ラーメン文化」がないお土地柄らしい。ラーメンの歴史は浅く、ラーメン=中華そばの時代が長いうえに、基本、デフォルトは「蕎麦」。飲んだ後の〆も「蕎麦」なのだそう。
そんなラーメン不毛の地に2010年、忽然とあらわれた『いちろくラーメン』。いまや福井市内に3店舗を構え、福井市の繁華街・片町で飲んだ〆に訪れる人も多い人気店だ。
オーナーの山中与志一さんは福井市出身。東京で長きにわたって修業した経験をいかして、東京ラーメンをベースに「福井流」にアレンジ。
毎日、ていねいに作るというオリジナルの「どんづけスープ」は鶏、豚、にぼしやサバ節など魚介のトリプルがベース。濁りがなく、透き通った「ピュア」な清湯スープが自慢だ。
どれだけピュアかといえば、いちろくラーメンは「子ども」にも大好評! 「子どもが親御さんを連れてくるんです(笑)。『うちの子どもが、いちろくラーメンしか食べないんです』とおっしゃる方もいます」と山中さん。
いまや、福井市民におけるラーメンのデフォルトになりつつある、いちろくラーメンで多くのファンを持つのが「鯖らーめん」だ。
ちなみに、いちろくラーメンでは、ラーメンの歴史が浅い福井においてセレクト可能なスタイルを、とスープは醤油、塩を用意している。
かねてから、福井らしいラーメンができたらと考えていた山中さん。ハピリンから、春のキャンペーン商品ができないか、と相談を受けたときに「うちの塩ラーメンにはサバが合いそうだからコレにしよう」とひらめいた。
予想は大正解。鯖らーめんの提供をスタートしたところ、毎回、鯖らーめん一徹、というお客さんや、なんとわざわざ横浜からやってきて「ウマい!」を連呼して帰って行ったお客さんもいたそうで、めでたく定番に。
サバラーメンの名を呈して、提供するラーメン店は全国になくはない。ただし基本、スープに使った「サバ節」へのこだわり、という場合が多く、ビジュアルから「サバ」を感じられることはあまりない。
しかし、いちろくラーメンでは、しっかり丼に鎮座した焼きサバの姿を拝むことができる。
サバが大好きという山中さん。もちろん、たんにラーメンの上にサバをのせたという代物ではない。目指したのは「ちゃんとサバの味を楽しみながら食べられるラーメン」だ。
「福井ならではのサバを使ったラーメンがあればいいなあと思っていましたが、たんにサバをのっけた、おいしくない、となったらダメでしょう。だから、僕がきっちりやらないと、と思って」と山中さん。
焼きサバは、福井市内の仕出し店でていねいに「炭火焼き」で仕上げたもの。さらにラーメンと焼きサバのバランスをとことん考慮して、仕上げの鶏油を強くする、トッピングを吟味するなど工夫を重ねた。
ジェンヌにとってもうれしい「サバの姿ありありラーメン」。いただいてみましょう!
【実食】サバ麺はしごも問題ないほどスッキリ!
まずスープ。うーん、旨みやコクがしっかりあるのに雑味がなく透明感があってスッキリ。焼きサバをかじる。おお。めちゃめちゃこれだけでも香ばしさと身のホグホグした感じ、旨みが素晴らしいんですけど!
そして、ピュアなスープに焼きサバの旨みがほどけていくと……芳醇なまでの奥深さ。澄み切っているのに「旨みがフルボディ」っていったいなんですか? という衝撃体験。 細めの縮れ麺がバランスよく、すするほどに旨し。
しかもあっさり落ち着きます。さっき、焼き鯖おろしそばを食べたというのに、ぜんぜん余裕。
アレンジバージョンの、福井県若狭地方の特産品・梅干しをのせた「梅鯖らーめん」も、極めて上品な仕上がり。こちらもぜひ!
サバ王国福井ならではの「究極のサバラーメン」。ラーメンとサバ好きは、これを食べるためだけに福井に来るべき! なにせ、新幹線も開通したら、すぐ、すぐ!
■『いちろくらーめん 福井駅前店』
[住所]福井県福井市中央1-2-1 ハピリン2階
[電話番号]0776-43-1639
[営業時間]10時半~14時半、17時~21時半、土・日・祝10時半~15時、17時~21時半
[休み]無休
[交通]JR福井線ほか福井駅から1分
[URL]https://ichiroku-ramen.com/
■池田陽子
全日本さば連合会広報担当 サバジェンヌ/薬膳アテンダント
サバを愛する消費者の集まりである「全日本さば連合会」(全さば連)の広報を担当。日本各地のサバ情報の発信、サバ商品のPR、商品開発等を行う。北京中医薬大学日本校を卒業、国際中医薬膳師資格を持ち、薬膳アテンダントとしても活動。水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」認定メンバー。著書に『サバが好き!~旨すぎる国民的青魚のすべて』(山と渓谷社)、『ゆる薬膳。』(日本文芸社)など。全さば連HP:http://all38.com/
取材・撮影/池田陽子
画像ギャラリー