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「分村移民」村を二分して満州に移住

軽井沢町の大日向開拓地は、満州に渡った人たちが戦後引き揚げてきて開拓した土地である。現在の長野県佐久穂町にあった大日向村は、満州に移住する「分村移民」を1937年に決めて、先駆けて行った。しかし、終戦後に帰国できたのは半数ほどにすぎなかったという。満州と元の大日向村の両方を失った人々は、軽井沢に移って新たな「大日向」をつくり、高原野菜のレタスなどを育てた。大日向開拓地を訪れた上皇陛下と美智子さまは、しばしばレタス畑を散策されている。

上皇陛下と美智子さまは、天皇陛下や秋篠宮さま、清子さんがお小さいころから、家族ぐるみで開拓団の方たちと交流を持たれてきた。軽井沢にご静養にいらした際には、子どもたちを地域の子ども会に入れて、さまざまな行事に参加させたりもした。清子さんは、大日向の開拓農家の集落にある保育園に通われたこともあった。地域の子どもたちとご一緒に過ごされる体験は楽しい思い出となっていることだろう。

塩で味付けされただけのレタス

清子さんが保育園に行っている時間を利用して、上皇陛下と美智子さまは、開拓団の家を訪問して、戦争当時の話に耳を傾けた。そんなとき、開拓団の方たちは、レタスの塩もみをお二人に食べていただきながら、終戦当時の様子を話されたという。塩で味付けされただけのレタスは、苦労を重ねて開墾したころの貴重な食べ物だったにちがいない。

例年、上皇陛下と美智子さまは、軽井沢へご静養に行かれていた。今年は大日向地区の方々と交流を重ねられるのだろうか。(連載「天皇家の食卓」第8回)

天守台

文・写真/高木香織
イラスト/片塩広子

参考文献/『皇后さまと子どもたち』(宮内庁侍従職監修、毎日新聞社)、『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(渡邉みどり著、こう書房)、宮内庁ホームページ

高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、カレンダー『永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

片塩広子
かたしお・ひろこ。日本画家・イラストレーター。早稲田大学、桑沢デザイン研究所卒業。院展に3度入選。書籍のカバー画、雑誌の挿画などを数多く手掛ける。挿画に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)ほか、著書(イラスト・文)に『私学の校舎散歩』(みくに出版)。

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