短期連載「逆転合格!中学受験」の第5回は、基礎力強化について論じます。「夏休みが終わるまでには基礎固めをしておきたい」と一般的には言われますが…。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏の考…
画像ギャラリー短期連載「逆転合格!中学受験」の第5回は、基礎力強化について論じます。「夏休みが終わるまでには基礎固めをしておきたい」と一般的には言われますが…。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏の考え方は柔軟です。
まさに直前、冬休みに基礎の問題集をやったA君の結果は…
夏休み後の本格的な受験対策として、まず過去問を解いて試験のレベルや傾向を知り、対策を立てること、そしてミスなどによる得点のとりこぼしをなくすことを挙げました。その次に取り組んで欲しいことは、基礎力が不足している場合の基礎力強化です。
2022年度、首都圏の大手進学塾に在籍する中学受験生A君は、冬休みに入る前の模試の偏差値が50前後で、80%偏差値(80%が合格すると考えられる偏差値)が60を超える第1志望の合格ラインにはまだ到達していない状態でした。真面目なタイプのA君は、塾のカリキュラムをコツコツこなし、夏休み以降は塾のテキストの実戦レベルの問題を解いていました。
しかし、志望校の過去問では、合格最低点を超えたり超えなかったりで、安定していませんでした。その不安定さは基礎力不足にあるのではないかと考え、冬休みに基礎~標準レベルの市販の問題集で基礎固めを行ったところ、冬休み後は成績が安定するようになり、2月1日の入試では見事に第1志望校の合格をもぎ取りました。
集団塾のカリキュラムでは「夏休みが最後のチャンス」だが…
「夏休みは天王山。基礎力を固める最後のチャンス」と塾ではあおられます。しかしそれは集団塾のカリキュラム上の話です。塾では夏休み後は受験レベルの問題に照準を合わせていきます。そのため、カリキュラムの都合上、基礎レベルは終える必要があるのです。
しかし、集団塾のカリキュラムについていけず基礎力が不足している場合は、個人的に基礎固めを図る必要があります。受験が迫ってくると、「今頃基礎固めなんて」と焦りを感じるかもしれません。しかし、結局はその方が合格への近道なのです。
基礎力はどう判定するのか「模試の正答率を活用」
今回は基礎力不足のチェックの仕方と、その対策法について述べたいと思います。
受験直前の冬休み頃の時期になると、多くの受験生はある程度の問題をこなしています。そのため基礎レベルの問題はだいたい解けるようになっています。問題は、ところどころ苦手な単元や苦手な問題があるケースです。それを見つけるのは簡単なこととは言えません。
一概に「基礎力」と言っても、そのレベルは人によって異なります。小学5年生までに習うような本当に基礎的な部分が出来ていない場合もあれば、そのレベルからすれば応用力とも言えるものが、上位層にとっては基礎力ということもあります。
自分にとって必要な基礎力を測る一つの良い方法は、模試の「正答率」を活用することです。最近は塾もIT化が進んでいて、模試の答案の採点結果には、その問題を何%の生徒が解けたかを示す「正答率」が一問ごとに表示されています。この表示を見て、正答率60%以上の問題を間違うことが多いようなら、一般的な基礎力が不足している可能性があります。上位層なら、正答率40%以上の問題の間違いが、基礎力不足の目安になるでしょう。
志望校によっても、要求される基礎力のレベルは異なります。それを測るのはやはり過去問を解いてみることです。過去問を解いて得点が4割以下なら、そのレベルで要求される基礎力が不足していると考えられます。レベルに応じた基礎力強化を図る必要があります。
どのように基礎力強化を図るか…小学5年生のテキストをおさらい
上記のとおり、強化すべき基礎力は、人によって、また志望校によって異なります。どのような単元、どのようなレベルの問題を解けばよいか良いかは、塾の先生や家庭教師などプロのアドバイスをもらうのが一番ですが、おおよその目安として、志望校の80%偏差値が50以下なら、小学5年生のテキストをおさらいした方が良いかもしれません(出題内容にもよります)。50~60ぐらいなら、6年生の1学期のテキストの基礎~標準問題レベル、または塾の夏期講座で行った総復習のレベル。60以上なら、6年生の1学期のテキストの応用問題レベルが「基礎力」と考えて良いでしょう。
新しい問題集に取り組むよりは、すでに使用した問題集をおさらいする方が、出来ない部分を効率的にやり直すことが出来ます。また、その方が定着しやすいという面もあります。ただしそれをした上で、必要な場合には、A君のように新しい問題集に取り組むのも良い場合があります。
勝負は勉強以外で始まっている「重要なのは体調管理」
受験の勝負は、当日だけでなく、すでに始まっています。アスリートと同じように、当日どれだけ結果を出せるかは、コンディションの調整や事前の準備をどれだけして本番に臨むかによっても違ってきます。そしてそれは受験生本人の力だけではなく、親御さんのサポートも大きく影響します。今回から、勉強面以外で、受験で結果を出すために必要なことについても述べて行きたいと思います。
まず第一に挙げたいのは、体調管理です。この時期、特に気を付けたいのが、風邪やインフルエンザ、そしてコロナです。風邪の症状で鼻水だけだったとしても、集中力を欠きます。多くの方が気を付けていることと思いますが、改めて注意すべき基本事項を書き出しておきます。
・外から帰宅したら、手洗いとうがいをする
・外出時や人前ではマスクを着用する
・暖かい服装をする(室内でも靴下をはくなど)
勉強と同じで、おろそかにせずにやるかどうかが大事です。勉強以外でも受験の戦いは始まっていることを意識して取り組んでいただきたいと思います。
圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。