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高倉健さんの主演映画から命名、幻のラーメン店「らーめんの駅」とは

平成5(1993)年、明子さんは遂に股関節亜脱臼の手術を決断。結果は大成功で、かねてからラーメン店をやりたいと言っていた二人の妹とともに「らーめんの駅」を開店し、3度目の復活を遂げました。

屋号「らーめんの駅」は、「純連」時代に何度も足繁く通っていただいた高倉健さんが主演の映画『駅 STATION』(1981年)からもらい、「もう一度原点に戻って再出発する」という想いと、ラーメン人生の集大成として「最後のお店=終着駅」という想いから付けられました。

平成21年には新横浜ラーメン博物館にも「らーめんの駅」が復活しました。

創業者の村中明子さん。平成21年、ラー博に復活した「らーめんの駅」にて

ラー博に出店へ、岩岡館長が衝撃を受けた味

平成6(1994)年に「すみれ」がラーメン博物館に出店するまでの道のりは数々の再現ドラマでも紹介されました。記憶に新しいのは平成30(2018)年に放送された日本テレビ「THE突破ファイル」です。※リンクをクリックすると内容を見ることができます

「純連(すみれ)」との出会いはラー博がオープンする3年前の平成3(1991)年。ラー博の創業者である岩岡洋志が、調査のため、全国を食べ歩いていた頃です。当時のメモが残っています。岩岡曰く相当な衝撃を受けたようです。

平成3年に館長が書いたメモ

岩岡は食べた後すぐに「横浜でラーメン博物館を開業する予定があり、ご出店いただけませんか?」といきなり交渉をしたようです。もちろん門前払いでしたが、横浜に戻った岩岡は他のメンバーに「純連(すみれ)」のラーメンは衝撃の味。これを横浜に持ってきたら絶対目玉になる!俺は諦めず何度も通う!」と断言したようです。

「すみれ」の味噌ラーメン

岩岡はまずは顔を覚えてもらうため、札幌に行くと5日間滞在し昼と夜、毎日ラーメンを食べに行きました。そして4日目の日、ついに村中さんから「俺に何か用か?」と、話す機会が出来ました。

岩岡はラーメン博物館の構想や夢を語るも、村中さんからは「うちは家族経営でやっている。前にも言ったがこの店で手一杯なんだ。味も門外不出。横浜でラーメン作るなんて、無理な話だよ」と断られました。

岩岡はそれでもめげず何度も「純連(すみれ)」に通い続けました。

ある時、店に行ったとき「岩岡さん、何度来てもダメなものはダメなんだよ」と言われるも「私の名前を憶えてくれたのですね!」と本人としては一歩前進したと感じたようです。その後も村中さんが競馬が好きと聞けば、待ち伏せをして一緒に競馬に行ったり、食事に行くほどの間柄まで進みました。村中さんからも「なんでラーメン博物館をやろうと思ったのか?」といった質問が出てくるようになりました。

そんな関係を2年ほど続けていたある日、村中さんから連絡があり「横浜で勝負してみたい。出店する方向で考える」という嬉しい知らせが来たのです。

誘致当時の村中伸宜さん

早速札幌に向かった岩岡でしたが、そこには浮かない表情の村中さんがいました。「岩岡さん、この前の電話の話はなかったことにしてくれ。家族を説得できなかった。申し訳ない」と、決まりかけた出店が白紙に戻ったのです。

ラーメン博物館オープンまで7カ月を切ったタイミングでした。

「出店の返事がなくても店を作って待つ」「平仮名の『すみれ』でもいいか?」

岩岡は色々考えた挙句、腹を決めてある決断をしました。その決断とは「出店の返事がなくても店を作って、出店できるタイミングまで待つ」という賭けに出ました。

早速札幌に行き、村中さんにその旨を伝え、店舗の図面と、パース(完成予想図)を手渡し、横浜に戻りました。

岩岡曰く「約3年、100回以上通ったし、村中さんにも色々と事情があると思います。それがクリアになった時に気持ちよく出店してもらえるまで待つことにしたのです。スタッフからは大反対でしたが(笑)」

そしてその数日後、突然設立準備中の新横浜に村中さんが来られました。

建設現場を下見した際の記念写真。中央が村中伸宜さん(平成5年撮影)

村中さんは「岩岡さんが人生かけて勝負するラーメン博物館がどれほどのものか気になってね。その景色、俺も一緒に見させてほしい」と言われたのです。そして「家族の反対を押し切って出店する。だから申し訳ないが“純連”という屋号は使えない。平仮名の“すみれ”でもいいか?」

岩岡は「はい!僕は村中さんのラーメンの味に惚れたんです!平仮名の『すみれ』で来てください!」となり、出会ってから3年の歳月を経て札幌「すみれ」の出店が決まったのです。その後、札幌のお店も、「純連」の漢字がとれて、「すみれ」となり、今に至ります。

平成6(1994)年当時の「すみれ」店内
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「最初は詐欺師かと思いました」今だから言える店主の本音...
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おとなの週末Web編集部
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