“守備力”を鍛えて失点を防ぐ
試験の得点は、単純化すると、次のように表すことが出来ます。
(試験の得点)=A-B-C
A:現在の実力で取ることのできる得点の最大値
B:制限時間内に解けなかった分の失点
C:ミスなどによる失点
Aは、試験問題に時間制限なしで取り組んで、ミスがない場合に取れる得点の最大値です。B・Cの失点が大きいと、合格点を取るのは難しくなります。模試で合格圏内にある生徒でも、1つのミスが10点以上の大きな失点につながり、不合格になってしまうことがあります。しかし、多くの受験生が取り組んでいるのは、このAを引き上げるための勉強です。一方でB・Cの失点を防ぐ対策は手薄になりがちです。その理由としては、以下のようなことが考えられます。
(1) そもそもB・Cの失点がほとんどない
このような生徒は特に問題はありません。おそらく上位層に入っていることでしょう。
(2) B・Cの失点が致命的だという認識が薄い
このパターンは、それなりに実力がある子の中にも意外と見られます。「たまたまミスしただけ」というように軽く考えているために、なかなかミスが減りません。点数の上下変動が見られる傾向があります。
(3) BやCによって大きく点数を落としているということに気づいていない
試験結果の見直しや分析が不十分なために起こります。
(4) B・Cの失点を防ぐ手立てが分からない
集団授業では、このようなミスを防ぐ対策などを指導してもらうことは通常ありません。個別に先生に相談するなり、個別指導を受けると良いでしょう。
(5) 塾のカリキュラムをこなすのに必死で、それ以外のことに目を向ける余裕がない
このケースでは、まずはAの実力を高める必要があります。しかし、B・Cの失点を防ぐことで実力不足をカバーできることも理解する必要があります。
野球やサッカーで試合に勝つためには、攻撃一辺倒ではなく、失点を防ぐ守備力も鍛えなければなりません。受験も同じで、合格するためには、Aの点数を取る「攻撃力」だけでなく、B・Cの失点を防ぐ「守備力」も大事です。この攻撃力と守備力を合わせたのが「得点力」です。守備力は受験までの短期間でも向上させることが可能です。
明暗を分ける「取捨選択力」
制限時間内に解ける問題量を最大化するためには、以下の2つの方向性があります。
(1) 解くスピードを速める
(2) 要領よく問題を解く
(1)のためには、国語や社会であれば「読むスピードを上げる」、算数であれば「計算スピードを上げる」「解法をすぐ引き出せるようにする」などの方法がありますが、いずれも一朝一夕でできるものではありません。しかし、入試問題を解くスピードを上げることは出来ます。それは、「試験慣れ」をすることです。受験する学校の過去問演習を繰り返し、その形式とレベルに慣れることで時間短縮が図れます。3年分以上解けば、かなりの効果が期待できます。
(2)については、特に算数の場合に、その違いが顕著に表れます。冒頭に挙げたAさんの例のように、算数は要領が悪いと大きく失点することがあります。要領よく解くための基本は、「解ける問題から解く」ですが、どの問題を解いてどの問題を捨てるのかの取捨選択が明暗を分けます。その「取捨選択力」も、算数の得点力の一つです。