いよいよ最後の総仕上げ、解けなかった問題はすべて解けるように 2月受験の受験生は、入試まで残すところあとわずか。基本的には、これまで(特に夏休み以降)出来なかった問題の総復習がメインとなります。 過去問演習も、取り組む年…
画像ギャラリー短期連載「逆転合格!中学受験」の第12回も、入試直前のさまざまな疑問に、多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏が答えます。「お試し受験」はしたほうがいいのか?学校は休ませる?……“モヤモヤ”の解消につながれば幸いです。
予行演習をせずに、本番に臨むのか
本命校の入試の前に、予行練習として比較的合格可能性の高い学校を受けるのが、いわゆる「お試し受験」です。もうすでに受験された方も多いでしょう。結果はいかがでしたでしょうか。
お試し受験に関しては、「受験のために半日以上時間をとられる」「もし落ちた時に、ショックで本命校の受験に支障が出かねない」「合格したら合格したで、気が緩みかねない」といった意見もあります。お試し受験をして正解だったのか、モヤモヤしている方もいらっしゃるかもしれません。
お試し受験をしなくても合格する方は例年、多数いらっしゃいますので、必ずしも必要なものでもありませんが、舞台であれ、講演であれ、スポーツであれ、本番に練習なしで臨むよりは、予行練習をして臨む方が、失敗するリスクを減らせるのは間違いありません。
解答がひとつずつズレていた!算数で想定外の大きなミス
首都圏に在住する2024年度の受験生A君の例を挙げましょう。本命は2月の受験ですが、お試し受験として、先日ある中学校を受験しました。その際に、算数で大きなミスをおかしてしまいました。解答欄に記入した解答が、ひとつずつズレていたのです。
試験終了間際になってそのミスに気づき、必死に書き直しましたが、一部訂正が間に合わず、制限時間となってしまいました。入試から帰ってくると、「試験でミスをした」と言って落ち込んでいたそうです。しかし、幸い合格の結果をもらうことが出来、事なきを得ました。お母様によれば、これまでそのようなミスはなかったそうです。
合否自体は成功でも失敗でもない
このように想定外のことが起こりうるのが本番の入試です。当日の緊張感は、やはり模擬試験などとは違います。もし落ちていたら、たしかにショックは大きかったでしょう。しかしそれ以上に痛いのは、本命校の入試でそのような失敗をおかすことです。今回の経験によって、2月の入試でA君が同じミスをおかすことはおそらくないことでしょう。
お試し校受験をあくまで本番のための予行練習と位置付けるなら、その合否自体はまだ成功でも失敗でもありません。結果的に成功につなげられるよう、合格しても気を緩めず、不合格でもめげることなくその教訓を活かすことが大事です。
学校は休む?「誰にでも当てはまる正解はない」
「受験前は学校を休ませた方が良いか?」
この質問も、毎年受験生の親御さんを悩ませる問題です。
肯定派には次のような意見があります。
・インフルエンザなどの感染症にかかるリスクを減らしたい
・突き指や手のケガなどをするのを避けたい
・勉強時間が確保できる
否定意見は主に次のようなものです。
・生活習慣が乱れる
・学校を軽視しているのではないか
この手の問題に、誰にでも当てはまる正解と言うものはありません。他人の意見はあくまで参考にとどめ、子どもさんの意志や学習状況、ご家庭の状況などを考慮して判断されると良いと思います。
学校を休んだ自宅学習中、二度寝しようとした受験生
もし子どもさんが学校を休まれる場合は、ひとつ気を付けておいて欲しいことがあります。これも実例を挙げて説明します。
今年度の受験生B君は、お試し受験では特待生で合格し、本命校(男子御三家の一角)の合格判定は70%を超えています。1月に入ってからは学校を休んで自宅学習をしていますが、先日お母様とお話をしたとき、「今朝も二度寝しようとしていたので、『そんなことなら学校に行きなさい!』と叱りました」とのことでした。その話を聞いて、自分自身の体験を思い出しました。
自由な時間があると「ダラダラと過ごしてしまった」
私の出身校である鹿児島のラ・サール高校は、2月上旬には卒業式が行われ、学校は終了します(ちなみに卒業式が早いのは受験のためではなく、開校以来の伝統です)。卒業後、全国(大半は西日本)から集まっている生徒たちは、それぞれの地元に戻り、各自で受験対策をします。
私も、卒業後、国立大学の2次試験までの約半月、たっぷり勉強に充てられる時間があると思い、「さあ、やるぞ」と意気込んでいたのですが、いざフタを開けてみると、学校が終わって急に丸一日自由な時間が与えられると、入試直前にもかかわらずダラダラと過ごしてしまい、当初想定していたほどの勉強はできませんでした。
もちろん個人差はあるでしょうが、自学自習に慣れているはずの高校生ですらそのようなことがありますので、塾でほとんどの学習を進めてきた小学生が、急に自宅で自主的に学習を進めようとしても、すぐに対応するのは難しいかもしれません。
学校を休む場合はサポートを付ける
受験前に学校を休むのはメリットもありますが、その場合に危惧されるのは、「気のゆるみ」や「ペースの乱れ」です。模試で良い結果を出していたのに受験で失敗する受験生は、少なからずそれが原因ではないかと個人的には思います。特に中学受験生は、受験ぎりぎりまで学力は驚異的に伸びます。ラストスパートをかけて最後まで必死に駆け抜け逆転合格を果たす生徒は、決して少なくはありません。
自宅学習で「気のゆるみ」や「ペースの乱れ」を防ぐひとつの方法は、時間割を作り、なるべくそのとおりに学習を進めることです。しかし、それは子どもさん1人のお力では難しいかもしれません。昨年度の受験生の中には、1月はすべて学校を休み、科目ごとに家庭教師を交互につけて、学習を進めていたケースもありました。もちろんそこまでの対応は難しいと思いますが、もし何日も学校を休む場合は、親御さんや家庭教師などのサポートを付けることが望ましいと思います。
いよいよ最後の総仕上げ、解けなかった問題はすべて解けるように
2月受験の受験生は、入試まで残すところあとわずか。基本的には、これまで(特に夏休み以降)出来なかった問題の総復習がメインとなります。
過去問演習も、取り組む年度を増やすばかりでなく、復習を中心とする時期です。解けなかった問題は、捨て問を除いて、すべて解けるようにしておきましょう。
復習の仕方は、基本的には、これまで使用した教材(過去問や模試を含みます)の中で解けなかった問題の解き直しです。解き直しで解けなかったものは、解答をよく読んで解けるようにし、数日置いてまた解き直します。それを繰り返し、解けない問題をつぶしていきます。
総復習では、「すべて終わらせる」ことよりも、「すべて終わらなくても、復習したことはすべて出来るようにする」ことの方が大事です。これから入試まで、出来なかったことは徹底的に復習して、頭に入れていきましょう。
受験当日の試験会場で役立つ「まとめノート」
2024年度受験のC君は、まだしっかり覚えていない箇所や、これは大事と思ったポイントを受験用のまとめノートに書いていますが、これも良い方法です。受験までの間にそれを何度も読み返して、しっかり頭にインプットするのです。
このようなノートを作っておけば、受験当日の試験場でも、ぎりぎりまで見直しをすることが出来ます。参考までに本人のまとめノートの画像を掲載します(本人の同意を得ています)。時間をかけてきれいにまとめる必要はありません。端的に自分が分かるまとめ方で結構です。
「新しい問題も継続して解く」ことのススメ
このように、入試まで基本的には復習が中心となります。講師によっては、この時期は新しい問題を解かなくてよい、という考えの方もいます。
しかし、私の実感としては、国語の文章問題や算数に関しては、復習だけでは勘が鈍るように感じます。量は少なくても、新しい問題も継続して解いていくことをおすすめします。1、2問で構いませんので、まだ解いていない過去問か、それを解きつくした場合は、同レベルの学校の入試問題の中から選ぶと良いかと思います。
圓岡太治(まるおか・たいじ)
三井能力開発研究所代表取締役。鹿児島県生まれ。小学5年の夏休みに塾に入り、周囲に流される形で中学受験。「今が一番脳が発達する時期だから、今のうちに勉強しておけよ!」という先生の言葉に踊らされ、毎晩夜中の2時、3時まで猛勉強。視力が1.5から0.8に急低下するのに反比例して成績は上昇。私立中高一貫校のラ・サール学園に入学、東京大学理科I類に現役合格。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。大学在学中にアルバイト先の塾長が、成績不振の生徒たちの成績を驚異的に伸ばし、医学部や東大などの難関校に合格させるのを目の当たりにし、将来教育事業を行うことを志す。大学院修了後、シンクタンク勤務を経て独立。個別指導塾を設立し、小中高生の学習指導を開始。落ちこぼれから難関校受験生まで、指導歴20年以上。「どこよりも結果を出す」をモットーに、成績不振の生徒の成績を短期間で上げることに情熱を燃やし、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて難関大学に現役合格した実話「ビリギャル」並みの成果を連発。小中高生を勉強の苦しみから解放すべく、従来にない切り口での学習法教授に奮闘中。