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終戦後もお召列車は戦闘装備

当時、戦争が終結したとはいえ、8月15日以降も、米国による攻撃があると考えられていたという。このため、貞明皇后が軽井沢へ向かうお召列車には、「高射機関砲」を搭載した“客車を改造した戦闘車”を連結するなど、臨戦態勢で運行が行われた。

当時の記録によれば、貞明皇后が乗車する専用の御料車(ごりょうしゃ)には、“防弾装甲”が施されていたが、機銃掃射から身を守るための大きな鉄箱を搭載した車両も連結し、さらには、お付きの人が乗る車両にも“地上戦闘員を約30名”乗車させた。

貞明皇后を乗せたお召列車は、予定どおり8月20日15時30分に、皇室専用駅である原宿駅宮廷ホーム(東京都渋谷区千駄ヶ谷)を出発し、目的地の軽井沢駅には19時20分、無事到着した。貞明皇后は、この日から12月まで軽井沢での”疎開生活”を送ることになった。

数少ない当時の資料より「火砲搭載車スケッチ図」。このような装備を施した戦闘車両がお召列車に編成された=図絵提供/国鉄大宮工場資料室
貞明皇后を乗せ軽井沢へ向かったお召列車の編成図。編成の中で「〇の中に防」と書かれているのが、高射機関砲を積載した戦闘車両=資料/宮内公文書館蔵

文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。

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