成都市民の避暑地にある臥龍基地
4日目はシャンシャンの父、リーリーに会うため、雅安基地から車で2時間半ほどの場所にある臥龍神樹坪基地へと移動。少数民族の四川省アバ・チベット族チャン族が自治する場所で標高1700メートルほどにあり、成都市内より10度ほど気温が低いため、夏の避暑地としても人気の場所だ。
こちらは繁殖基地としての役割も担っているため、この時期はよちよち歩きの子パンダにも出会える。
同基地には、2020年7月20日に韓国で初めて自然繁殖で生まれたパンダで、2024年にはドキュメンタリー映画も公開されたフーバオや、アメリカ生まれのシャオチージーなどの人気パンダもおり、それぞれのファンが集っていた。
野生パンダの生息地・四姑娘山へ
基地に別れを告げた後は、パンダを守って死んだ4人の娘が姿を変えたという伝説が残る四姑娘山(スーグーニャンシャン)を視察。こちらは標高4000メートルを超えるような場所もあり、高山病にも注意が必要。もしもの時のためにと酸素ボンベが支給された。
6月は高山植物が美しい時期らしいが、この時は雨が続いてまだそんなに咲いておらず。代わりにというか、ヤクがたくさんいた。このあたりは家畜としてヤクを飼い、その肉を食べ、乳を使ってチーズやヨーグルトを作るのだという。
露店でヤクの乳を使ったソフトキャンディを食べたが、牛乳よりも濃厚な味わいだった。普通のヤクの値段は8万元(約160万円)から10万元(約200万円)だが、珍しい白いヤクは観光写真用として、15万元(約300万円)ほどで取引されるそう。
このあたりには2012年、2013年と、野生のパンダの目撃情報なんかもあり、2年前にはフンも発見されている。「もしかしたら、野生のパンダに会えるかも!?」などと淡い思いを抱いていたが、まわりは観光客だらけ。動物より人間の方が多いのであった。次はぜひ、基地だけでなく、野生パンダの保護区を訪ねてみたい。
文・写真/二木繁美
<プロフィール>
にき・しげみ。パンダライター・イラストレーター。日本パンダ保護協会会員。アドベンチャーワールドにいたパンダ、明浜・優浜の名付け親のひとり(命名は一般公募、命名者数は2頭のパンダで計延べ1577人)。パンダが食べる「パンダ団子」を実際に味わい、パンダのうんこの香りを嗅いだ人間です。『このパンダ、だぁ〜れだ?』『水曜日のお嬢様』『パンダのタンタン、また明日ね』(講談社ビーシー/講談社)、『きずなのパンダ タンタン』(あかね書房)など、パンダ関係の著書多数。