AIの普及などで業務効率が上がる一方、目まぐるしく変化する時間のスピードに「心と体のバランスが取れない」と感じる人が増えている。そのような時代にあわせて、群馬県・草津温泉の「草津温泉ホテルヴィレッジ」が取り組むのが、「体内時計のズレ」から生じる不調を整えるウェルネスプログラムだ。古来より湯治場として栄えてきた温泉地の歴史を、現代のヘルスケアへとアップデートする取り組みを取材した。
温泉保養リゾートの原点に戻ろう
標高1200m、草津の高原エリアにあるホテルヴィレッジは、10万坪の森の中に立つリゾートホテル。館内には大きなプールのほか、パターゴルフ場やボーリング場、卓球、ゲームセンターなどもある。一年中プールに入れ、子ども連れのファミリー層でにぎわっている。
ファミリー向けのホテルとしての認知度は高く、リピーターも多い同ホテル。新たなプログラムを行う必要はないのだが、このプランに取り組む背景には昭和43(1968)年の創業時の思いが関係していた。
ホテルヴィレッジの創業者は中澤清氏。清氏は、祖父である市郎次氏が、日本近代医学の父と称され、明治天皇の侍医を務めたベルツ博士の薫陶を受けたことに影響され、「ドイツに負けない温泉保養地を作りたい」との思いを抱き、ホテルを創業している。
清氏の孫に当たる中澤一裕社長によると、「温泉保養地としてプールなども整えたのですが、いつしか『家族に楽しいホテル』として認知されていきました。今一度、創業時の原点に返り、『温泉保養』について、情報発信をしていきたい」との思いを語る。
3年ほどかけて考案した保養プログラム「草津EDU」の「EDU」はエデュケーションの略で、「学び」を持ち帰ってもらおうというもの。筆者が参加した回は、体内時計のリズムに合わせた光、食事、運動、入浴を主眼としていた。プログラムで着目しているのが「クロノタイプ」だ。
プログラムを企画した温泉利用指導者でケイズケア代表のケイ武居さんによると、「クロノタイプ」とは、個人の体内時計の主に遺伝的な特性によって決まる「1日の中で最も活動的になりやすい時間帯」や「眠気を感じやすい時間帯」の傾向のこと。「朝型」「夜型」などに分類され、タイプごとに効率的に動ける時間帯が変わってくる。
プログラムでは、最初に自身の「クロノタイプ」を判定し、その人に合った入浴時間を提案してくれる。
まずは「クロノタイプ」の概念を学び、「朝型」「夜型」それぞれのタイプに合わせた最適な過ごし方や、入浴・運動のタイミングなどの指導を受ける。
どのタイプであっても味方にしたい要素の一つが「光」だという。光を浴びずに生活していると、体内時計は“後ろにずれ込む”性質があり、このズレが体調不良の原因になっていくそうだ。
診断によると、私は「朝型」だった。いまは割と朝早くに目覚めるが、若い頃は遅くまで寝ていたから、当時は体内時計が後ろにずれ込んでいたかもしれない。
朝の散歩は朝型・夜型を問わず、体のズレを元に戻してくれる効果があるそうだから、光を浴びながら森の中を散歩するのはとてもいいらしい。
そして、体のリズムに合わせた、体にやさしい入浴方法はこうだ。
(1)寝る1時間半〜2時間前の入浴
(2)寝る前は、40〜41℃のぬるめの湯
(3)1回の入浴は3〜10分程度。入る前と後に1杯ずつ水を飲む。
これはよく知られている入浴法と同じだが、普段の温泉旅では意識せず思いついた時間にお風呂に出かけるため、「快眠のための入浴時間」から外れてしまうことも多い。
今回は「寝る1時間半〜2時間前」を意識して守ることで、入眠効果を実感できた。
また、一般的に朝の入浴は「あつめの湯」に入ることで交感神経を活発にすると言われるが、草津の湯は強酸性で刺激が強い。朝型の私は朝は何もしなくとも覚醒しやすいから、刺激を入れすぎるのを避ける目的でも「ぬるめの湯で十分」というのは目からウロコだった。
「あつめの湯」に入るなら朝食や散歩のあとがいいというので、一息入れてからあつめの湯にトライした。














