石垣島の繁華街を歩いていると、ふと現れる赤瓦屋根の古民家。そこは、1951年の創業以来、この場所で泡盛を造り続ける『池原酒造』だ。昔ながらの銅鍋や直火釜を使う一方、凍らせて楽しむ「白百合」やチョコレート専用泡盛など、自由な発想から生まれた酒も。75年続く小さな酒蔵には、伝統を守るだけではない、泡盛の楽しさが詰まっていた。 11月1日の今日は、1989(平成元)年に沖縄県酒造組合連合会によって制定された「泡盛の日」。泡盛の魅力にあらためて触れてみたい。
市街地から徒歩10分。小さな古民家で、75年続く泡盛造り
石垣島は、竹富島や与那国島など、八重山諸島の島々へ向かうアクセスの拠点。沖縄の離島のなかでも人気の観光地だ。離島へのフェリーが発着する石垣港離島ターミナル周辺には、アーケード商店街や公設市場が集まり、島内最大の繁華街が広がっている。
そんな市街地から徒歩わずか10分。土産物店や飲食店が軒を連ねる『ユーグレナモール』を抜けると、民家に囲まれた赤瓦屋根の古民家が現れる。
ここが、1951(昭和26)年創業の『池原酒造』だ。
酒蔵といえば、広い敷地に大きな建物があり、車がないとなかなか足を運びづらい――。そんなイメージを持っていた筆者にとって、この立地は意外だった。
「これなら市街地の観光ついでに立ち寄れる!」そう思い、酒蔵見学を予約した。
見学は約30分。1組5名までの少人数制で、蔵内を案内してもらえる。最後には試飲もあり、全商品を味わえるうえ、気に入った1本をそのまま土産として購入できる。
そして、蔵の中に足を踏み入れてみると、街中にあることを忘れてしまうような濃密な泡盛の香りが漂っていた。
創業から75年。『池原酒造』では今も、創業当時から変わらないこの場所で、昔ながらの手造りによる泡盛造りが続いている。
古い銅鍋に、昔ながらの直火釜。変わらない製法が生む泡盛
『池原酒造』を語るうえで欠かせないのが、代々受け継がれてきた手造りの製法だ。
池原興吉さんが創業し、若くして亡くなった興吉さんの後を、娘の池原信子さんが2代目として継いだ。その後も蔵を守り続けてきたものの、高齢化に伴い廃業の危機に直面。そこに孫の池原優さんが名乗りを上げ、2013年に3代目として蔵を引き継いだ。
酒造り未経験の状態から蔵を引き継いだ優さんは、手探りで試行錯誤を重ねながら、先代の味を再現することに力を注いできた。そうして造りを身につけながら、親子3代にわたって守られてきた製法を受け継ぎ、今も泡盛造りを続けている。
蔵内で目に留まるのが、創業当時から使われているという銅鍋だ。熟成途中のもろみなども間近で見ることができる。
代表銘柄「白百合」も、そんな昔ながらの造りから生まれる泡盛のひとつ。春先に石垣島の野原で咲く百合の花のような、清潔感や爽やかさをイメージして創業者が名付けたといわれている。
原料には米麹(タイ産米)を使い、洗米から蒸留まですべて手作業。仕上げには昔ながらの直火釜を使っている。
その味わいを確かめるなら、まずはストレートやロックで。水割りは泡盛4:水6が目安で、ソーダ割りでも楽しめる。
そして、ここでひとつ意外な楽しみ方を教えてもらった。なんと、白百合は「凍らせてもおいしい」のだ。
凍らせると香りが飛んでしまうのではないかと思ったが、白百合は香りが損なわれず、むしろ芳醇な味わいを堪能できる。さまざまな飲み方を楽しめる懐の深さも魅力だ。










