牛もプラントベースも関係ない 目指すは「味の黄金比」
「肉を使わないハンバーガーを食べてきてください」
ある日、編集Eさんからミッションがきた。なるほど、と思った。「代替肉」は今どんどん増えているし、マクドナルドでも「植物肉バーガー」を出したくらいだし、意外性はそんなに……なんて思っていたら、Eさんが続けて言った。
「かの『ヤザワミート』が出すらしいんですよ」
前言撤回、いやいや、意外性大ありではないか! ヤザワミートといえば、大人気店『ミート矢澤』を経営する精肉業者。客は、おいしい牛肉を求めて『ミート矢澤』に行列を作るのである。「『肉の替わり』を使うなんて、いいのか、ヤザワミート?」と正直思った。
やってきたのは、代官山にあるヤザワミート直営のハンバーガーショップ『BLACOWS(ブラッカウズ)』。1番人気のメニューは、「黒毛和牛100%パティを使用したハンバーガー」だという。その店で、肉を使わない「オルタナティブバーガー」を出すのだ。ますます、脳内は「いいのか、ヤザワミート?」でいっぱいだ。
登場した「オルタナティブバーガー」(2000円)は見た目、ハンバーガーそのまんま、とかなりおいしそう。まずはパクっとかぶりついた。
噛みしめると、パティとバンズ、トマトソース、オムレツ、チーズ……さまざまな具材の味が折り重なるように口の中で溶け合う。もうひと口、もうひと口……旨い。めくるめく味のハーモニー。パティが突出しているのではなく、すべての具材が見事に調和しているというのか。
「オルタナティブ」は、「主流な方法に替わる新しいもの、代案」という意味だ。日本語ではよく「代替肉」というが、もはやこれは新しい食べ物としたらどうか。「代替」って、「肉の替わりだよ」というイメージだから、ちょっとさびしい。まったく新しい食べ物であり、新しいバーガーだ。
「あくまでも『味の黄金比』を目指しました。それはパティが黒毛和牛100%でもオルタナティブでも変わりません」と、開発したヤザワミート統括総料理長の福島亮さんは言う。なるほど、と深くうなずいた。
具材は、パティ、自家製トマト&パプリカソース、京都福知山産こだわり卵を使ったチーズオムレツ、自家製タルタルソース、パルジャミーノチップス、シチリア産アーモンド、イタリアンパセリ、そしてバンズは全国に約30店展開する人気ブーランジェリー『メゾンカイザー』製。
これらのメンバーがいい仕事をし、見事な「味の黄金比」を生み出しているのだ。主役だけが目立つのではなく、バーガーは「チームプレイ」なのである。
それにしても、なぜ「ヤザワミートがオルタナティブバーガーを作ったのか?」。ずっと渦巻いていた疑問だ。福島さんが答えてくれた。