霜降り肉の溶けるような柔らかさと脂の旨味を「牛肉の美味しさの最上位」としていた私の価値観を、大きく変えてくれたのが「京中(きょうなか)の熟成肉」。
熟成肉の先駆者として名高い「京中(京都 中勢以)」が直営する肉料理店「京中 月(にくづき)」は、祇園のそばの白川のほとりに店を構えている。2015(平成27)年に開店し、その存在を知るものの、これまでに足が向かなかったのは、私が「牛肉は霜降り肉が美味しい」と思っていたからだろう。
京中の熟成肉の美味しさに驚いた牛皿
「月」を初めて訪れたのは昨年の秋。京都国立近代美術館での鑑賞後、白川筋を歩いていたときに、たまたま店の存在に気づき、運良く席が空いていた。だが、これが偶然ではなく必然で、熟成肉に導かれたと思うほど、今ではすっかり、京中の熟成肉の虜になってしまったのである。
店内に入り、メニューを渡されるものの、特製ハンバーグやサイコロステーキは、3日前の予約が必要なので、「京中式熟成牛肉の牛皿ご膳」1350円を注文した。調理が始まると肉と脂の焼ける甘く上品な香りが漂ってきて、期待が高まる。
供された牛皿はすき焼き風で、食べた瞬間は割下の甘さが先にくるが、噛むほどに肉の旨味をしっかり感じることができ、飲み込んだ後も旨味の余韻が広がる。温泉卵を追加しなかったことを悔やみつつ、添えられた祇園・原了郭の黒七味をかけて、驚いた。単なる味変にとどまらず、肉の旨さをさらに感じることができたからだ。
1350円の安さで、これほど美味しい熟成肉が食べられる。いつか記事で紹介したいと機会を窺っていた。そして先日、取材を申し込んだところ快諾をいただき、2代目社長の加藤謙一さんが対応してくださることになった。















