「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「うなぎ」。「季節ごとの行事やお祝いの日に食…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「うなぎ」。「季節ごとの行事やお祝いの日に食べる特別の料理を『行事食』といいます」(農林水産省のホームページより)が、「土用の丑の日」に「うなぎ」以外にも食べるものがあるというのですがそれは……。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
2022年夏は「土用の丑の日」が2回
今年(2022年)の「土用の丑の日」は、7月23日と8月4日の2回です。土用の丑の日の行事食として有名なのがうなぎ。うなぎを食べると精がつき、夏バテしないとの言い伝えがあります。ところで、土用の丑の日の行事食は、うなぎのほかにもいくつかあります。そのうちのひとつは、次のうちどれでしょうか。
(1)イカ
(2)シジミ
(3)サンマ
たっぷり栄養を蓄えて
答えは(2)の「シジミ」です。
夏の土用は、丑の日に「う」のつくものや黒いものを食べると良いという言い伝えがあります。「う」のつくものとして、うなぎのほかに「うどん」、「梅干し」、胡瓜(きゅうり)・西瓜(すいか)などの「瓜(うり)」、黒いものとして「土用しじみ」などが食されます。
なお、シジミには旬が2回あり、夏のシジミは産卵期を迎え栄養豊富で、『土用しじみ』と呼ばれます。冬のシジミは寒い時期に備え栄養を蓄えており、『寒しじみ』と呼ばれます。
(1)のイカは、春の土用に食べると良いとされる食べ物です。
春の土用は、戌(いぬ)の日に「い」のつくものや白いものを食べると良いという言い伝えがあり、イカのほかにも「イワシ」「イチゴ」「しらす」などが食されます。
(3)のサンマは、秋の土用に食べると良いとされる食べ物です。
秋の土用は、辰(たつ)の日に「た」のつくものや青いものを食べると良いという言い伝えがあり、サンマ(青魚)のほかにも「大根」「玉ねぎ」などが食されます。
そもそも、「土用の丑の日」って?
「土用」とは?
古代中国の五行思想(万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるとする思想)では、『春』『夏』『秋』『冬』にそれぞれ『木』『火』『金』『水』が割り当てられ、季節の変わり目を『土』(土用)としています。
したがって土用は夏だけでなく、次のように春夏秋冬それぞれにあります。
春の土用 … 立春の前の約18日間
夏の土用 … 立夏の前の約18日間
秋の土用 … 立秋の前の約18日間
冬の土用 … 立冬の前の約18日間
「丑の日」とは?
数字と動物とを結びつけたのが以下の十二支です。
子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)
十二支は年だけではなく、月や日にも用いられます。1日目が「子」、2日目が「丑」、3日目が「寅」と続いて12日で一巡し、13日目には「子」にもどります。したがって、約18日間の土用の間には、丑の日が1回だけの場合と2回の場合とがあります。
土用の丑の日になぜ「うなぎ」?
土用の丑の日にうなぎを食べるようになった由来として、巷間でよく言われているのは「平賀源内」説です。平賀源内は江戸中期の本草学(薬物に関する学問)者で戯作者。うなぎは冬が旬なため、鰻屋では夏になると売り上げが落ちていたそうです。とある鰻屋からそのことで相談を受けた平賀源内が、「丑(うし)の日に『う』のつくものを食べると良い」という伝承を引き合いに出し、「本日丑の日」と書いた紙を貼りださせました。すると売り上げが上がり繁盛したため、ほかの鰻屋も真似るようになり、土用の丑の日にうなぎを食べるという風習が出来たというものです。この説は有名ですが、史実かどうかはわかっていません。ただ、江戸時代からの習慣であることは、間違いないようです。
「丑の日に『う』のつく食べ物」という伝承についても、真偽のほどはともかくとして、うなぎにはビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE、カルシウム、タンパク質など豊富な栄養素が含まれており、夏バテ防止、食欲不振の解消、疲労回復などに効果があると考えられています。
土用は季節の変わり目で体調を崩しやすいため、栄養のあるものを食べて体調管理を心掛けるという風習には合理性があると考えられます。
(参考)
[1] 鰻(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1607/spe2_01.html