サバファンが集う「全日本さば連合会」広報担当サバジェンヌこと池田陽子さんによるとっておきのサバグルメをお届け。今回は「さばめし」。聞き慣れないメニューですが、東京・水道橋に専門店があるのです。早速直撃しました!
画像ギャラリーさばめしとはなんぞや!?
昨年、水道橋に「日本初」のとある「サバグルメ」専門店がオープン。サバファンの間で話題になっている。
『さばめし専門店 鯖匠(さばしょう)』。
What’s さばめし!?
お店のHPによれば「一食で三杯楽しめる鯖匠のさばめし」。なんなの、なんなの!? どーゆーこと!? 行くしかないでしょ!!
お店はJR水道橋駅から徒歩3分に位置する。出迎えてくださったオーナーである、ダイニングデザイン代表取締役の泉谷勇二さんに、前のめりで質問するジェンヌさん。
「さ、さばめしってなんなんですか!?」
「ダシで炊いたご飯に、焼いたサバをのせたものです」と説明する泉谷さん。「薬味やダシとともに、提供します。サバとご飯をさまざまなスタイルで楽しんでいただけるのが特徴です」
具体的にいうと、食べ方の基本は以下。
■1杯目
サバの身をほぐし、ご飯に混ぜこんで食べる
■2杯目
添えられた薬味とゴマを加えて食べる
■3杯目
ダシを加えてお茶漬けで食べる
いわば、ひつまぶしのように楽しめるさばめし。発想のきっかけは!?
「だってサバとごはんって、すっごくおいしいじゃないですか」
ニコニコと笑顔で語る泉谷さん。いたってシンプルな回答のように聞こえるが、とんでもない。泉谷さんは筋金入りのサバ好きである。さばめしは、昨日今日でできたものではないのだ。
ダイニングデザインは、昼は魚定食の食堂、夜は魚バル形態の『なぎさ食堂』、日比谷でウニといくらをメインにした『函館海鮮うにくら』を展開。これまでも泉谷さんが「魚好き」であることから、いずれも魚をメインとした料理を提供する店舗を立ち上げてきた。
そんな泉谷さんが、こよなく愛しているのが「サバ」。
常日頃から、おいしいサバのリサーチに余念がなかった泉谷さん。たまたま宮崎のブランドサバ「ひむか本さば」に出合い、そのおいしさに感動!
なんと感動のあまり、ひむか本さばを提供するために、サバ料理専門店『海鮮さば鉄』を作ってしまったほどだ。
ジェンヌさんも、じつは何度も足を運んでいた名店だが、コロナ渦の影響で残念ながら業態転換(現在は「なぎさ食堂」として営業)。
でも、泉谷さんの心の片隅にはいつも「サバ」があった。ランチに重きを置いた店舗をオープンしようと考えていたときに、柱となるメニューとして思い浮かんだのが「さばめし」だった。
「さば」と「めし」がおいしくなるように素材も抜かりなし!
さばめしは、『さば鉄』でランチとして提供され、大人気だったメニュー。じつは、さかのぼればかつて運営していた店で、コース料理の〆として土鍋で提供していた一品だ。
さばめしのヒントとなったのは、焼いたタイをのせて土鍋で炊き込む「たいめし」だった。そもそも提供していたのは、たいめしと、あなごめし。サバでもおいしいのでは……と作ってみたところ、オーダーはタイでもあなごでもなくサバに一極集中!
泉谷さんは、タイにもあなごにもKO勝ちした、さばめしを看板料理として『鯖匠』を立ち上げることを決意した。
さばめしは、たんに、ご飯にサバをのせたという代物ではない。泉谷さんのサバと米をおいしく楽しんでもらいたい、というアツい思いがギューッと詰まっている。そのこだわりを説明しよう。
まずサバは、茨城県波崎の『越田商店』の「サバ文化干し」を使用。サバファンならご存じの方もいらっしゃるかと思うが、厳選したノルウェーのサバを、約半世紀の間守り続けた秘伝の「熟成漬け汁」に付け込んで仕上げた逸品。「日本各地のものを食べてみましたが安定してバツグンにおいしい」と、絶賛する泉谷さん。
表面をパリッと、身はほっくり、ジューシーに仕上げるために、串にさして「近火の強火」で香ばしく焼き上げる。
お米は「さばめし」用に厳選した岩手県産のお米。日髙昆布を加え、ダシとともに炊き上げる。
お茶漬け用のダシは、マダイでとった「特製白湯だし」。マダイの頭をじっくり強火で2時間煮こんでとった白濁した濃厚なダシだ。
「いろいろ試してみましたが、さばめしにしたときにバシッと合うのが『タイ』だったんです」と泉谷さん。意外にもサバ節だと「何か足りない感じ」だったらしい。
薬味のわさびも、さばめしに合うようにと、本わさびを刻み醤油漬けにしたものを提供。「辛みや香りに加えてアクセントになる食感もプラスしました」と泉谷さんは説明する。
サバがおいしい、めしがおいしい、ではなくて「サバ」と「めし」がおいしくなる設計が考え尽くされている。
サバと米。合うのがわかっている組み合わせに、工夫に工夫を重ねた「さばめし」。
では、さっそくいただいてみましょう!!
実食! アレンジが楽しすぎてジェンヌ驚き!!
じゃーん。「さばめし」登場。
うっとり……。白めしの上にバリっと香ばしく焼いたサバが鎮座するビジュアルに、サバ心がときめきずぎる!
ではまず、1杯目! 丼のサバをしゃもじでよくほぐして、ご飯と混ぜこんで食べる。
「よーく混ぜる」のがおいしく食べるポイント。ほぐほぐほぐ。ほんのりダシが効いた薄味のご飯が、サバの芳醇な脂をまとって、旨みサクレツ。
なんでしょう。いうならば、炊き込みご飯+チャーハン÷2的な感じ!!
ようはサバの炊き込みご飯にも、サバチャーハンにもできない芸当なわけです。サバの旨みをドストレートに米と楽しめる! 味付けもほどよく、濃すぎずサバの旨みだけでグイグイいける感じ。直球表現ですが、「あー、旨い旨い! ワシワシ」。
サバは絶妙な焼き加減ゆえに、パリッとした皮とほっくりした身がほぐれていても存分にご飯の中で主張。存在感アリアリで楽しめます。さ、さばめし、すごいぞ。
続いて三つ葉とゴマをのせて。爽やかな香りとゴマの風味で、さばめしの味わいが軽やかに。
そして、3杯目。特製白湯ダシをかけていただく。ちらっと先にダシだけ飲んでみたジェンヌさん。豚骨を思わせるパンチのあるコク! これがどんな風になるのかな……とさばめしにかけてみる。すすってみる。
あーれー!?
サバと一体化すると、激変。おだやかで上品な味わいに変化! サバの旨みとタイのコクが醸し出す「ミラクルなさばめし汁」効果で、さらさらとお腹におさまる。薬味のシャキシャキわさびを入れるとシュッと味がしまってまたよきかな。
さばめしの楽しいところは自由に「アレンジ」して「思いのまま」に食べられること。店内にはゆず粉、たくあんも常備。香りや辛み、食感で味変が楽しすぎる!
「さばめしに添えられた『鮮魚のごまあえ』(この日はイナダ)をのせて食べてるのもおすすめ。ダシをかけてお茶漬けにしてもおいしいですよ」と泉谷さん。
はい、やってみます。
ふえー。濃厚なゴマ風味、イナダの旨みまでコラボしてどうしましょうよ、というおいしさ。
聞けばお客さんも食べ方はいたってフリーらしい。っていうか、たぶんサバファンならいろいろやりたくなるに決まってる!!
だって、自販機を見てくれたまえ! 定食の小鉢的に用意されたお惣菜がどれもこれも、さばめしにのせたら楽しそうなものばかり! キムチ、きんぴら、豆腐、納豆、ポテサラ、ひじき、マカロニサラダ……。サバと口の中で混然一体にしたいやつばかりじゃないですか!!
泉谷さんが意図したわけではなかったそうだけれど、すでに常連客の間で普及しているらしい。「とくに『キムチ』が好評のようです」と笑う泉谷さん。
そんなにいろいろアレンジしているとお米がなくなっちゃう! という不安は無用。なんと無料で「追いめし」1杯可能。ありがたき太っ腹! 心ゆくまでさばめし天国に浸っていただきたい。
魅力的すぎる! 8種類の「さば串」
鯖匠の魅力は「さばめし」だけではない。
「さば串」も注目だ。しかもバリエーション多彩。なんとそのラインナップは8種類! これだけ豊富に揃うお店は珍しい。
プレーンなさば串からはじまって、タレ鯖串、ねぎ鯖串、鯖田楽、山椒鯖串、梅鯖串などの和風以外にもサバトマチーズ串、ガーリック鯖串といった洋風まで「鯖串パラダイス」! 「全串制覇」していくツワモノもいるそうだ。
さば串はビールやサワーで楽しむのはもちろん、じつはこちらもさばめしに応用可能! 好評なのが「梅鯖串茶漬けONさばめし」。梅の酸味でなんとも爽やかな味変なのだ!
鯖匠では、「タレさばめし」も用意。こちらは、生サバに甘辛いタレをからめて焼き上げたもの。いわば「照り焼きサバ」だ。
コク旨なサバと、甘辛タレがしみしみしたご飯で、白めしがガンガンすすむー(涙)。こちらも、基本的な食べ方はさばめしと同様だが、お茶漬けにすると「コクうまなしょうゆラーメン」風に! これまた旨し!
そのほか、さばめしにゴマ油であえた刻みねぎをのせ、レモンをしぼって食べる「ねぎさばめし」、タレさばめしを山椒風味にアレンジした「山椒さばめし」も提供。
聞けば「まだいろいろ企画中」だそう。
さばめしを食べていると、「のりをのせたら」「漬物をのせたら」「野菜をのせたら」「柚子胡椒や豆板醤やマヨをのせたら」「ダシがコンソメスープだったら」となんだかいろいろ思いついてしまう楽しさがある。
みなさんも思いついたら泉谷さんへどうぞ(笑)。
さばめしの可能性は無限大。サバリエーションが楽しすぎる! もはや、「鯖と白めしのワンダーランド」といっても過言ではない、「さばめし体験」をぜひ!
■『鯖匠』
[住所]東京都千代田区神田三崎町2-21-11
[電話番号]03-3221-8860
[営業時間]11時半~14時半LO、17時~21時、土・日・祝11時半~14時半LO
[休み]無休
[交通]JR中央・総武線ほか水道橋駅西口から徒歩2分
取材・撮影/池田陽子
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