×

気になるキーワードを入力してください

SNSで最新情報をチェック

落語にもなった茗荷の“物忘れ”

「茗荷を食べると物忘れがひどくなる」という言い伝えをネタに、落語に「茗荷宿」(みょうがやど)という演目があります。語り手によって細部は異なりますが、あらすじは次のとおりです。

その昔、東海道に「茗荷屋」という宿屋がありました。宿場のはずれにある上に、宿屋を営む夫婦は客扱いも悪く、いつも閑古鳥が鳴いているありさまでした。ところがある日、一人の商人(あきんど)が泊めて欲しいとやってきます。

商人は帳場に財布を預けますが、集金をして回った帰りで二百両は入っているといいます。おどろく亭主。客を風呂場に案内すると、すぐに女房に二百両の入った財布を預かったことを伝えます。女房もおどろき、一計を案じます。食べると物忘れするという茗荷をたくさん食べさせれば、財布を預けたことを忘れるのではないか、と。裏の畑でとれた茗荷を使って、客が風呂からあがると、茗荷の酢味噌和え、茗荷を添えた焼き魚、茗荷ご飯、…と、茗荷尽くしの食事を出します。夜が明けると、今度は朝ごはんに茗荷の味噌汁、茗荷の漬け物…と、これまた茗荷尽くし。朝食を食べ終わると、商人は財布を預けたまま宿を発ちました。

うまくいったと喜ぶ夫婦。ところがしばらくすると、「預けた財布を忘れた」と戻って来ました。亭主は財布を渡さぬわけにはいかず、商人は財布を受け取るとまたすぐに立ち去りました。「あれだけ茗荷を食べさせても効かないもんやな」と落胆する女房に対し、亭主は「いや、ちゃんと効いてるで」。何か忘れて行ったものがあるかとたずねる女房に亭主は言いました。「宿賃を払うのを忘れて行った」。

茗荷はその昔中国でも食べられていたそうですが、現在では頻繁に食卓に上るのは日本ぐらいだと言われています。あまり目立たない食材ですが、面白いエピソードがまつわっているのは意外ですね。

落語にもなった茗荷の物忘れ

(参考)
[1] 食卓を彩る香辛野菜&つまものの魅力(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2108/spe1_03.html
[2] 周利槃特~茗荷に隠された逸話~(奈良薬師寺公式サイト)
https://www.yakushiji.or.jp/column/20211018/

icon-gallery
icon-prev 1 2 3
関連記事
あなたにおすすめ

関連キーワード

この記事のライター

圓岡太治
圓岡太治

圓岡太治

最新刊

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。11月15日発売の12月号は「町中華」を大特集…