料理の味に深みを出す
もう一つの基本味は、(3)の「うま味」(うまみ)です。
長い間、味覚の基本となる要素(基本味)は、甘味(かんみ)・塩味(えんみ)・苦味(にがみ)・酸味(さんみ)の4つと考えられていました。5つ目の基本味となる「うま味」が発見されたのは、わずか100年ほど前のこと。発見したのは、日本人でした。
日本では古くから、料理の味に深みを出すために昆布だしが使われてきました。1908年、東京帝国大学の池田菊苗博士は、この昆布だしの味の正体が「グルタミン酸」であることを突き止めました。そしてその味を「うま味」と名付けたのです。その後、別の研究者らにより、かつお節に含まれるイノシン酸、干ししいたけに含まれるグアニル酸などもうま味成分であることが解明されました。
うま味が基本味として認識されたのは池田博士の功績によるものですが、うま味自体は、もともと各国の料理の中にも存在していました。タイのナンプラー、ベトナムのニョクマムなどの発酵調味料には、発酵の過程で原料中のタンパク質がアミノ酸に分解され、うま味成分であるグルタミン酸が豊富に含まれています。また、西洋料理でよく使われるトマトやチーズにもグルタミン酸が多く含まれています。
なお、当初名付けられた「うま味」という名称は、現在に至るまで使い続けられています。日本以外では「うま味」に相当する言葉がなく、1985年開催の第一回うま味国際シンポジウムを機に、「UMAMI」が国際的に使用されることとなりました。