「こんな印象のラーメンは初めて」2004年時の岩岡館長の感想
「けやき」のラーメンを一言で表現するのは実に難しいです。筆者の表現力が乏しい事もありますが、それだけではありません。あえて表現するならば「もう一度確認してみたくなる味」です。
この味を生み出した似鳥さんに聞いてみると、そのテーマは「五感に訴える一品料理としてのラーメン」とのこと。確かにその一言に集約されているように思えます。
下記の文章は筆者が2004年当時にけやきさんを食べた時の感想です。
運ばれてくるラーメンを見たとき、およそラーメンらしからぬ盛り付けにまず驚かされました。キャベツ、にんじん、キクラゲ等の野菜と、その上に白髪ネギが彩り鮮やかに盛られ、すでに視覚だけで胃は刺激されます。
そしていつも通りスープをひと啜り。一見、濃厚に思えるスープは、思ったより、あっさりと仕上がっています。しかしこの後、麺を持ち上げた瞬間、今までに体験したことのない香りが、嗅覚を刺激しました。
「何だろう、この香りは?」小麦の香り?いや、小麦を炒ったような芳ばしささえ感じます。そして麺をひと啜り。先ほどの麺の香りと共に、記憶にある札幌ラーメン特有の食感と共に、微妙な弾力感と麦の味、いや「とりたての麦の味」とでも言うべきか、そんな味わいが口いっぱいに広がりました。
そしてまたスープを飲む。最初に飲んだスープのアッサリした印象から一変、麺とスープの出会いによる、なんともいえない味わいに変化します。
その後、1/3ほど食べた頃、さらにそのスープは大きな変化を遂げます。食べ進むうちに徐々にコクが増すのです。一般的にラーメンを食べたときの感覚は、最初にインパクトを感じ、その味に慣れてきて食べ終わるのですが、けやきのラーメンは全く違ったのです。コクが増すといっても、決して脂っぽいという訳ではありません。
そして気づいたらスープを飲み干していました。その食後感は、とてもサッパリとした後味の良い、いや、切れ味のある味でした。
これまでに全国各地のラーメンを食べてきたつもりですが、こんな印象を受けたラーメンは初めてでした。しかし、結局ラーメン一杯をいただいたものの、人にどう伝えてよいのか分かりませんでした。
ただ、少なくとも「五感」が刺激された事だけは間違いありません。