1年目から大活躍、史上2人目の新人王とリーグMVP同時受賞
しかしふたを開けてみれば、俊足巧打を武器にして157試合に出場しア・ナ両リーグ通じ最多の242安打を放ち、打率.350、56盗塁で首位打者と盗塁王の2タイトルを獲得したほか、右翼から三塁への矢のような送球「レーザービーム」も話題となり守備でもゴールドグラブを受賞。史上2人目となる新人王とリーグMVPの同時受賞をはたした。
イチローが1年目から成功した要因は、巧打に加え、持ち前の俊足巧打をとことん活かしきったことにある。2001年のイチローはゴロアウトがフライアウトの1.71倍(平均1.08倍)と徹底的に打球を転がし、242安打のうち単打が192本と約8割を占めた。野手の間をついて、コツコツと単打を狙い、足を生かす、野球の原点に回帰したような「スモールボール」の打撃スタイルが、パワー野球全盛のメジャーリーグで花開いたのだ。
4367安打は史上最多、殿堂入りはほぼ確実
しかも驚くべきは、1年目にクリアしたシーズン200安打超、打率3割超、20盗塁超というハイレベルな成績を10シーズンに渡り継続したことだ。この間、2004年にはシーズン262安打を放ち、ジョージ・シスラー(1893~1973年)の持っていた257本(1920年)のシーズン安打記録を84年ぶりに塗り替える偉業を成し遂げている。
イチローがメジャーリーグで放った安打は3089。日本での1278安打と合わせ4367安打となり、ピート・ローズ(83)の4256安打を抜き史上最多。歴代記録においても、メジャー挑戦前に目標として掲げていた「個人で世界一」を成し遂げた。
タイ・カッブ(1886~1961年)やベーブ・ルースら球史に名を残す大打者たちと並び称される、メジャーリーグの歴史にその名を刻んだレジェンドといっても言い過ぎではないだろう。
渡り歩いた球団は、マリナーズ、ニューヨーク・ヤンキース、マイアミ・マーリンズ、再びマリナーズ。2019年に現役を退いた。2025年、引退から5年で有資格となるアメリカ野球殿堂入りするのは間違いない。
パワー野球にパワーで挑んだ和製スラッガーの先駆者・松井秀喜
日本の野手のメジャーリーグ挑戦を振り返る上で、イチローとともに、その功績に光を当てるべき選手がいる。パワーヒッターとして日本選手で初めてメジャーリーグに挑んだ松井秀喜だ。
松井が海を渡ったのは、イチローのデビューから2年後の2003年。イチロー、新庄剛志(52)、田口壮(54)に続き日本の野手として4人目の挑戦となった。これまでの選手と違ったのは、スラッガーとしてパワー野球のメジャーリーグにパワーで挑んだことだ。巨人でプレーした日本での通算本塁打は10シーズンで332本。メジャー行き前年の2002年にはシーズン50本塁打をマークしていた。日本を代表するホームランバッターがメジャーでどこまで通用するのか、関心が集まった。