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デミオがマツダを救った

初代デミオは、1996年から2002年までの約6年間販売され、日本国内で約50万台を販売。マツダ車としては1980年にデビューして陸サーファー御用達として日本でブームとなった『赤いファミリア』以来のメガヒットモデルとなった。

初代デミオがデビューした1996年のマツダの決算は悲惨なもので、有利子負債は7000億円と伝えられていた。前述のウォレス社長は、コストカットを励行し1997年は黒字に転換。初代デミオがすべてではないが、傾きかけたマツダの復活の起爆剤になったのは間違いない。

1980年にデビューした5代目ファミリアは若者に大人気。単月ではあるが王者カローラを凌駕したこともある

マツダは不思議なくらい定期的に経営難に陥る。1980年代のピンチを救ったのが赤いファミリアで、1990年代のピンチを救ったのは初代デミオということになる。ちなみに2000年代、リーマンショック後の救世主はSKYACTIV技術でありCX-5となるだろう。

SKYACTIV-Dを搭載して一躍人気モデルになってリーマンショック後のマツダを救った初代CX-5

最もマツダらしくないクルマ

大成功に終わり、マツダを救うかたちとなった初代デミオ。開発者は当時、初代デミオについて、「マツダ車としては異例の短期間での開発だった」とコメントしていた。マツダ車はいい悪いは別として、こだわりが凄い。そのこだわりがユーザーのニーズと乖離することも珍しくないのだが……。

そんなマツダ車にあって初代デミオは妙に脱力している。マツダ車のDNAである走りへのこだわりも初代デミオには強く感じない。安くユーザーのニーズに合わせたいいクルマを作る、というのがあるのみ。

道具と割り切ったのが成功の要因だったが、大きな賭けだったに違いない

あとにも先にも初代デミオほど、『道具』に徹した割り切ったマツダ車は存在しない。そういう意味では最もマツダ車らしくないマツダ車とも言える。

初代デミオは、「安っぽすぎる」とユーザーが敬遠して売れなかった可能性もある。成功と失敗は紙一重というが、マツダのいい意味での割り切りが神風を吹かせたのだろう。

今はデミオの車名は消滅

そのデミオは、キャンバストップで有名になった2002~2007年の2代目、スポーティなエクステリアとSKYACTIVによる好燃費で人気となった2007~2014年の3代目、そして2014年に登場した現行の4代目へと続いている。

ただし現行の4代目は、2019年に世界統一車名のMAZDA2に変更されデミオの車名は23年間で消滅してしまった。

2代目デミオは質感アップとキャンバストップで人気となった

そのMAZDA2についてだが、次期モデルについてはどうなるかがまったくわからない。マツダオリジナルのモデルの駆初が凍結され、トヨタヤリスのOEMとなる噂もあるし、現行モデルを当面作り続けて終焉となるという噂もある。

3代目はスポーティなエクステリアとダウンサイジングで人気となった。写真の後期モデルはSKYACTIV-Gを搭載して燃費競争の発端となった

【初代マツダデミオ1300LX主要諸元】
全長3800×全幅1670×全高1535mm
ホイールベース:2300mm
車両重量:910kg
エンジン:1323cc、直列4気筒SOHC
最高出力:83ps/6000rpm
最大トルク:11.0kgm/4000rpm
価格:111万1000円(AT)

【豆知識】
アマティは北米で展開予定のマツダのフラッグシップブランドで、日本で販売していたユーノスよりもさらに上級で、レクサス、インフィニティ、アキュラがライバル。W12気筒エンジンを搭載したアマティ1000を筆頭に、アマティ500(ユーノス800)、アマティ300(ユーノス500)、クーペ(ユーノスコスモ)というラインナップで1994年初から北米・カナダで販売開始することを1991年に発表。ディーラー網の整備なども行われていたが、直前になり計画が白紙となり実現しなかったマツダの幻のブランド。

写真はユーノス500で、このモデルはアマティブランドではアマティ300として販売する予定だったが実現しなかった

市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。

写真/MAZDA、ベストカー

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市原 信幸
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