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今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バブル崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第21回目に取り上げるのは、スバルサンバートラック&バンだ。

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スバル360をベースとした商用車

サンバーは富士重工(現スバル)の軽商用車で、現在販売されているモデルはサンバー史上で言えば8代目となる。初代から一貫してトラックとバンをラインナップしている。

初代サンバーは国民車構想から生まれたスバル360の基本構造を踏襲して、専用のラダーフレームを採用して3年後となる1961年に登場している。

初代サンバーのチーフエンジニアは、スバル360の開発責任者だった百瀬晋六氏だった。

初代サンバーはスバル360のコンポーネントを利用して誕生。しかしオリジナルのラダーフレームなどが与えられるなど、商用車としての使い勝手も考慮されていた

リアエンジンリアドライブがアイデンティティ

1BOXタイプやトラック系の商用車は、運転席のシートにエンジンを搭載して後輪を駆動する後輪駆動(FR)レイアウトが一般的ながら、サンバーはスバル360のコンポーネントを使ったこともあり、リアの車軸の後方にエンジンを搭載して後輪を駆動する独自のリアエンジンリアドライブ(RR)レイアウトを採用。

リアにエンジンを搭載して後輪を駆動するRRレイアウトはサンバーの専売特許。制約のあるサイズのなかで
荷室長はライバルを凌駕

このRRこそサンバーのアイデンティティとなり、スバルのオリジナルサンバーでは一貫してこのRRレイアウトを踏襲し続けた。

デザインはボンネットのないモノフォルムで、下唇を突き出したようなファニーなフロントマスクが個性を際立たせていた。通常ドアは前にヒンジが装着され、ドアの後部から車内に乗り込むが、初代サンバーは後ろにヒンジを装着した前開きのスーサイドドアを採用(←ロールスロイスと同じ!!)。

ドア後ろにヒンジを装着したスーサイドドアはロールスロイスと同じ!! 2代目も踏襲したがマイナーチェンジで前ヒンジの普通のドアに変更された

農道のポルシェ

サンバーは農道のポルシェと言われていたが、それはリアエンジンリアドライブのポルシェ911に由来している。農道を走るRR車ということだ。RX-7が944とコンセプトが似ていたことからプアマンズポルシェ(安価にポルシェの性能が手に入るクルマ)と表現されていた。

積載量などにこだわりながらもシンプルなのが初代サンバーの魅力

和製フェラーリ(フェラーリルックの日本車という意味で三菱GTOなどがあり)やプアマンズポルシェという言葉には、ポルシェの性能が安く購入できるという賛辞のいっぽうで、所詮は安いクルマ、ポルシェにはなれないといった揶揄が含まれているのに対し、サンバーの農道のポルシェは、最大級の賛辞に近く、オーナーも、「ポルシェは狭い農道を自在に走ることはできないが、サンバーは自在」と誇らしげだった。

ちなみに軽トラックでは、農道のフェラーリと言われたのがホンダアクティ。これも駆動レイアウトがリアミドにエンジンを搭載して後輪を駆動することから根付けられていた。同じホンダのミドシップスポーツのNSXから、農道のNSXと呼ぶ人もいた。

サンバーが農道のポルシェと呼ばれたのに対し、ミドシップレイアウトのホンダアクティは農道のフェラーリ、または農道のNSXと呼ばれていた

初代のコンセプトを頑なに守った

初代サンバーの特筆点は、日本車に4輪独立懸架が一般的ではなかった1960年代初頭にすでに採用していた点だ。高級乗用車の専売特許でもあった4輪独立懸架を軽自動車、それも商用バンとトラックに採用していたのは異例だった。

この4輪独立懸架によりサンバーはライバルとはひと味違った乗り心地のよさがセールスポイントとなっていた。私は世代的にも初代サンバーは一度も運転したこともないためそのアピールポイントが本当か誇張だったのかは知らない。しかし当時としてはかなり画期的にいい乗り心地だったようだ。これは私が現在住んでいる近くの初代サンバーを廃車になるまで業務で使い倒したというガラス屋さんに確認ずみ。

初代サンバーが登場して軽商用バン&トラックの勢力図が変わった
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この記事のライター

市原 信幸
市原 信幸

市原 信幸

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