ガラスが割れない
初代サンバーはどのような魅力を持っていたのかについてのご主人の体験談をお披露目しておく。以下はその貴重な証言だ。
1960年代初めころは業務用としてマツダのオート三輪のT2000を使っていて積載性もいいし満足していたが、最大の問題点は転倒。クルマが転ぶなんて、と思うかもしれないが、フロント1輪の不安定さから、オート三輪の転倒事故は特別に珍しくはなかった。ガラス屋としては転んでは商品がダメになってしまうが、ウチのオヤジも2回ほど転んで大損していた。
そんな時に初代スバルサンバーがデビュー。軽商用トラックということで荷室が小さくなるので、買い足してマツダT2000と併用することになった。
取り回しも楽でナイス
富士重工は中島飛行機を前身とする自動車メーカーだったが、メジャーな存在じゃなかったし、正直あまり期待はしていなかった。
マツダT2000は進化・改良によってよくなっていたというが、乗り心地はゴツゴツしていたし跳ねる感じだった。T2000しか乗ったことがなかったので、トラックなんてこんなものと別に不満はなかったが、初代サンバーに比べると格段に乗り心地がいい。
でも乗ってすぐに認識が変わった。ボディが小さいのでT2000よりピョンピョン跳ねるのかと思いきや乗り心地がいいのに驚いた。乗り心地がいいのは、すなわちデッキに搭載した荷物にも優しい。割れ物を扱うガラス屋としてはこれに勝るものはない。
あと、世田谷区の住宅街は昔から細い道、入り組んだ道が多いのだが、初代サンバーは取り回し性にも優れていた。そんなこともあって、廃車にするまで20年以上乗り続けた。
ただクルマは頑丈だったが、弱点は塗装。1980年代まで富士重工のクルマは塗装がよくない、というのは本当で、塗装の劣化が激しくて2回くらい自分で塗り直した。
通称がユニーク
初代のヒットにより軽商用バン&トラックとしての地位を確立したサンバーは、1966年にフルモデルチェンジを受けて、何のひねりもない超ストレートな「ニューサンバー」というキャッチフレーズで2代目が登場。初代からキープコンセプトだがよりも洗練されたデザインが与えられていた。前期モデルでは初代の特徴であったスーサイドドアは継承していたが、マイナーチェンジで前ヒンジの通常ドアに変更された。
サンバーはフルモデルチェンジしたら「ニューサンバー」、前ヒンジドアを採用してフロントグリルを立派した「ババーンサンバー」、サスペンションを強化してさらにフロントグリルを力強くした「すとろんぐサンバー」(←ひらがななのがキモ)といった具合にストレートかつユニークな通称が与えられた。
剛力サンバー登場!!
3代目サンバーは1973年に登場。エンジンは365㏄、直列2気筒2サイクルというのは初代、2代目と同じだったが、空冷から水冷に変更され2代目の20ps/3.2kgmから28ps/3.8kgmへと大幅スペックアップ。2代目からの流れで、これまた「剛力(ごうりき)サンバー」というユニークな通称が与えられた。
サンバーは初代、2代目はいかにも古臭くてクラシカルな商用バン&トラックという雰囲気だったが、3代目で一気に現代の軽商用バン&トラックに通じるボディ形状になったのも見逃せないポイントだ。