×

気になるキーワードを入力してください

SNSで最新情報をチェック

日本に現存する最も古い酢蔵で、歴史を振り返る

ツアーで特別に見学できる「尾道造酢」

お酢のおいしさを噛みしめながらサイクリングを続けている間に、約440年も前の安土桃山時代からある老舗酢蔵「尾道造酢」に到着した。尾道でお酢作りが始まったのは、多くの積み荷を運んだ北前船(きたまえぶね)の寄港地として栄えていたことが背景にある。水が綺麗で温暖なこのエリアには、お酢作りに必要な風土が整っており、良質な地下水の採れる井戸も点在。今もなおここでは井戸水でお酢を作っているそうだ。

酒粕を密閉状態にし3年以上熟成させる

はじめに足を踏み入れたのは、広島県の酒蔵から仕入れた酒粕を3年間熟成させる蔵だ。

「熟成させるとアミノ酸が増え、うま味やコクが生まれ、香りが増すんですよ」と、「尾道造酢」取締役の田中丸善要(たなかまる・ぜんよう)さん。熟成後は酒粕をタンクに入れてお湯で溶かし、出てきた酒粕汁を袋に入れて濾過(ろか)器に敷き詰める。さらに圧をかけ、綺麗な酒粕汁を搾り出し仕込み液を完成させる。

特許を取った「水平式連続醗酵法」で発酵

その後、力強い酢の香りが漂う酢蔵の心臓部へ。「水平式連続醗酵法」という、独自の方法で発酵を行うことで、良質な菌を保つことができ、まろやかで香り豊かなお酢ができあがるそうだ。左から仕込み液を流しこむと右側の層に流れ、出口につく頃にはゆっくりと酢酸(さくさん)菌がアルコールを分解し、お酢になるという。

熟成タンクの中で寝かせたお酢
完成したお酢。多彩なラインナップを揃える

酢酸発酵でお酢になったものを熱殺菌して熟成タンクの中で寝かせたら、ビン詰め・ペット詰めを行い、完成だ。「最低半年寝かせることで、口当たりのよいお酢に仕上がります」と、田中丸さん。天正(てんしょう)10年から歴史を刻む酢蔵で、また異なる尾道の魅力に触れることができた。

街の人々から熱い視線を浴びる、新鮮な体験

珍しい自転車に向け、手を振る人も少なくない

復路は、「尾道本通り商店街」や、ラーメン屋・喫茶店などの小さな商店が軒を連ねる「水尾町(みずおちょう)通り」を抜け、再びスタート地点の『BETTER BICYCLES』へ。

商店街に店を持つおばちゃんや、観光に訪れたカップルなど、あらゆる人から視線を浴びる、不思議なひとときであった。歩きながら手を振ってくれる人も少なくなく、新しいコミュニケーションの形を垣間見たような気がする。

定番の広島観光に飽きた大人たちへ

港町を颯爽と駆け抜ける自転車

通常とはひと味違った広島・尾道の美しい風景を楽しむことができる、16人乗り自転車の旅。初めて訪れる人はもちろん、何度も訪れている上級者にもぴったりな尾道の新たな魅力に触れられる体験だ。

『BETTER BICYCLES 尾道店
[住所]広島県尾道市土堂2-10-24 ONOMICHI SHARE内
[電話]0848-38-2912
[営業時間]10時~18時
[休日]水曜日
[交通]JR山陽本線「尾道駅」から徒歩5分
[料金]「尾道体感ツアー」(毎週金・土・日曜日・祝日)ドリンク付1100円(ノンアルコール)、ビール1本付1650円
「尾道今昔ツアー」(毎週金曜日)1ドリンク・クロワッサン付3300円
「尾道ビールツアー」(土・祝日)試飲・ビール1本付3300円

文/中村友美

フード&トラベルライター。東京都生まれ。美術大学を卒業後、出版社で編集者・ディレクターを経験後、現在に至る。15歳からカフェ・喫茶店巡りを開始し、食の魅力に取り憑かれて以来、飲食にまつわる人々のストーリーに関心あり。古きよき喫茶店や居酒屋からミシュラン星付きレストランまで幅広く足を運ぶ。趣味は日本全国の商店建築巡り。

icon-gallery
icon-prev 1 2 3
関連記事
あなたにおすすめ

この記事のライター

中村友美
中村友美

中村友美

最新刊

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。9月13日発売の10月号は「ちょうどいい和の店…