カタログも歯の浮く言葉の連発
カタログも超カッコつけていた。表紙は車両の写真すら入らない黒一色で、クラウンのカタログよりも高級感があった。そして、表紙をめくると、いきなり1ページ使って「豪華さを高らかに謳わない。内面にひそむ、ほんとうのゆたかさを語りたい(表記のまま)」と歯の浮くような文言が書かれている。そのほかウィンダムの魅力についてとうとうと語るなど、他のトヨタ車のカタログとは一線を画したイメージ戦略が展開されていた。
これは1980年代のTV CM、「週末、活字を忘れる」、「週末、地図にない道を走る」などのキザなセリフで話題になったアメリカン・エキスプレスカードの「男はこうありたいね」シリーズのCMに通じるものがあった。
トヨタはあの手この手でウィンダムのイメージ戦略を展開し、それが奏功。日本では2005年からレクサス車が販売を開始したが、その時のこだわりを見た時にLSの初代セルシオではなくESの初代ウィンダムを思い出したのは筆者だけではないはずだ。
レクサスクォリティながら安い!!
初代ウィンダムはカムリとプラットフォームを共用するモデルをより高級に仕上げたわけだが、レクサスES300のすばらしさをアピールすることでウィンダム=高級というイメージを植え付けることに成功。
もちろんイメージ戦略を裏切らない内容にクルマが仕上げられていたことは当然だが、レクサスクォリティながら買い得感の高い価格設定だったことも成功したポイント。
レクサスのクォリティで作られた高級サルーンながら、ウィンダムのデビュー時の価格は289万8000~331万8000円と、マークII、三菱ディアマンテとそん色ないどころか、むしろ安いくらいの価格設定だった。いいものを安く買えるという満足度も高かった。
ウィンダムは初代、2代目は販売面で成功したが3代目で消滅。一方レクサスESは現在もレクサスのFFモデルのフラッグシップとして販売されていて、新型も日本で初公開された。ウィンダムのようなイメージで成功したクルマはそれほど多くない。
【初代トヨタウィンダム3.0G主要諸元】
全長:4780mm
全幅:1780mm
全高:1390mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1550kg
エンジン:2958cc、V6DOHC
最高出力:200ps/5800rpm
最大トルク:28.0kgm/4000rpm
価格:331万8000円
【豆知識】
上海ショーで世界初攻された新型ESが2025年10月1日に日本で初公開された。ボディサイズは全長5140×全幅1929×全高1555mmという大型セダンで、ホイールベースは2950mmと現行ESから80mm延長されている。斬新かつ未来的なエクステリアデザインが目を引く。日本向けモデルは2.5ℓ、直4ハイブリッドとモーターのBEVの2タイプが予定されていて、日本への導入は2026年春とアナウンスされている。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/TOYOTA、CADILLAC