お宝三昧!舌切雀のお宿 ホテル磯部ガーデンの100%源泉風呂がサイコー
せんべいに練り込まれた鉱泉の入り心地はというと……。
宿泊した「舌切雀のお宿 ホテル磯部ガーデン」には1階と2階に浴場があり、1階大浴場の片隅には源泉100%の浴槽がある。ここに入ると、お湯の特徴がよくわかる。
少しひんやりした冷泉は、ほんのり、笹濁り。どっぷりと顎までつかると、塩辛さと磯の香りがふわりと漂う。羊水にぷかーっと浮かんでいるような浮遊感があり、とても心地よい。泉質はナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉で、神経痛や胃腸病に効果があるという。まさに入っても、食べてもワザありの湯なのだ。
「宝物殿」と名付けられた展示コーナーには文人墨客の書画とともに、飲泉カップが置かれていて、「飲める温泉」としての歴史を伝えている。
ホテル磯部ガーデンの祖先は代々庄屋を務める家柄で、旅館業を営む以前から多くの文人墨客との交流があったとか。地域の名士の宿だから、館内には貴重な作品が山のように保管されている。萩原朔太郎が宿泊時に残した屏風、竹久夢二の美人画ポートレート、山下清の墨絵……。
舌切雀神社にあった、黒く色づいた竹製のつづらや、雀の舌を切ったとされるハサミが展示されている。 小林一茶の「いくらくふものぞをふなよ雀の子」という句も残されている。さらにおじいさんの木彫り像はなんと高村光雲作!
江戸時代の浮世絵師・歌川国芳の「吉原雀」は、幕府の禁止令を皮肉った戯画で、置き屋の芸妓や客が皆、雀の顔をしていて実にユーモラスだ。館内は、水が流れるロビー周りのしつらえがぜいたくで、壺や骨董品など見応えがある。 高崎駅からローカル線で約20分。首都圏から至近なのに、有名温泉地のような混雑はなく、のどかすぎる雰囲気が心地よかった。
帰りは榮泉堂で「150円のそば」を買って帰った。いまどきその金額で物が変えることに驚き、30年前の世界にタイムスリップしたんじゃないかと目を疑った。
余計なものを加えない磯部せんべいの素朴な味わいは、この温泉街の雰囲気そのもの。明治・大正・昭和・平成・令和と5つの時代を経てもなお、変わらぬ味を守り続けてきたこの温泉街を、ぜひ訪ねてほしい。
舌切雀のお宿 ホテル磯部ガーデン
住所:群馬県安中市磯部1−12−5
電話:027-385−0085
客室数:115室
料金:1泊2食1人1万6650円(1室2名利用時)〜
日帰り入浴:なし
文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。















